地球にやさしく日本を運ぶ〜内航海運〜

内航海運は、暮らしと産業を支えています。

 ◆国内貨物の海上運送を"
内航海運"といいます。
                    
 
COASTAL SHIPPING
 国内の港と港を結んで、食料品、日用品、産業基礎資材や石油などの貨物を運ぶ内航海運。暮らしと産業の発展に大きな役割を果たしてきた日本の大動脈です。一度に大量の貨物を長距離輸送する内航船は、地球環境にやさしい輸送機関として、いま注目されています。また、阪神淡路大震災でも陸路を断たれた物資の緊急輸送に大いに活躍しました。
 内航海運には5,084の中小事業者、6,364隻の船舶、31,886(フェリーを含む)人の船員が従事して、これからも日本の経済を支えていきます。

 ◆内航海運は国内貨物の約4割を運んでいます。

 日本国内の貨物輸送には、内航海運をはじめトラック、鉄道などが利用されています。
 このうち内航海運が運んでいる量は年間4億9,725万トンです。
 しかもその平均輸送距離は474 qで、トラックの約8.2 倍です。また、輸送機関別にみると、内航海運はトンキロ(輸送量×輸送距離)ベースのシェアで、全体の約4 割にも及んでいます。 これは内航
海運が長距離・大量輸送に適していることを示しています。(数値はいずれも2002年度)


 ◆365日、24時間。産業基礎資材の82%を運んでいます。

 内航海運の輸送する主な貨物をみると、石油製品、石灰石・原油などの非金属鉱物、鉄鋼なとの金属、セメントなどの窯業品、硫酸・ソーダなどの化学薬品、砂・砂利などの骨材、自動車などの機械、石炭などの8品目で、輸送トンキロの82%を占めています。このほかにも生鮮食料品や日用品も含めたあらゆる貨物を、365日、24時間各地の港と港を結んで運び続けています。そして、これらの貨物の品質を保ちながら、安全かつ効率的に運ぶため、各種の専用船が活躍しています。

 

渋滞もなく、地球にやさしい海上輸送が注目されています。

 @人命の安全と海洋環境の保護に努めています。

 人命の安全と海洋汚染の防止対策は、国際条約で取り決められ、各国で国内法に組み入れられています。内航船にはこれに基づく諸設備が装備され、船内で発生する廃棄物は厳しい規則に基づいて処理されています。また、衝突予防装置をはじめとするさまざまな航海の安全設備や、船員の労働を軽減する各種自動化装置も取り入れられています。


 A内航海運はエネルギー効率のよさが自慢です。


 近年、世界的な規模で省エネルギーが大きな課題になっており、国内の貨物輸送でもエネルギー効率のよい輸送が問われています。内航海運は2002年度に6,364隻の船舶で4 億9,725万ンの貨物を運んでいますが、1 トンを1q運ぶのに必要なエネルギー消費量でみると、営業用トラックの約5分の1という、効率のよさを誇っています。(数値は2002年度)

 B未来のためにも、"モーダルシフト"が重要になっています。

 国内の貨物輸送の分野でも最近、トラックへの過度の依存から、道路混雑や騒音はもちろん、二酸化炭素の排出に伴う地球温暖化などの環境問題が指摘されています、そこでトラックが運んでいる貨物の一部を、内航海運や鉄道に振り替える“モーダルシフト”が拡大しています。エネルギー効率がよく、『地球にやさしい内航海運』への期待がますます高まっています。

 

内航船が運ぶ貨物のいろいろ

加工されてきたさまざまな分野に使われる鉄鋼製品。国内海上輸送の中では主要な貨物です。

本州四国連絡橋や東京湾横断道路の橋脚部分なども大型デッキバージで海上輸送されます。

海底トンネル工事の掘削マシンも海上輸送されます。

セメント工場からサービス・ステーションと呼ばれる流通基地までの輸送には、ばら積みのセメント専用船が使われます。

新幹線の車両も内航貨物船で運びます。

輸入穀物類の一部は、外航船から内航船に積み替えて国内の各地に二次輸送されます。

新聞紙に使われる巻き取り紙は、毎日大量に海上輸送されます。

貨物を積んだトレーラーが自走して艙内を出入りするロールオン・ロールオフ船、ドア・ツー・ドアの海陸一貫輸送が行われています。

北海道から牛乳を積んだタンクローリー車がロールオン・ロールオフ船で運ばれてきます。

コールセンターに保管された石炭は、内航船で二次輸送されます。

石油製品を運ぶ油送船では、安全性の高い遠隔操作の自動荷役装置を持った船が増えています。

石灰石は、セルフ・アンローダーを備えた石灰石専用船でセメント工場や製鉄所に運ばれます。

ハブ港とローカル港を結ぶコンテナのフィーダーサービス(国内二次輸送)にも内航船が活躍します。

多層式の自動車専用船は、自走して積み揚げする自動車を一度に500〜1,500 台も運びます。

輸出入される液体ケミカル製品の一部は横浜港、神戸港の洋上で内航船/外航船に積み替えて輸送します。

 

内航海運業とは

 内航海運業は、内航海運業法という法律において、船舶による物品の運送であって、船積港および陸揚港のいずれもが本邦内にあるものとされています。つまり、一般の貨物船やタンカーなどによる鋼材、セメント、石油、コンテナなどの国内輸送のことです。したがって、外航船(国際貿易貨物を船舶によって海外まで〈海外〜海外間を含む〉運ぶ海上輸送)による輸送は内航海運業には該当せず、また、国内輸送であっても旅客船や漁船による輸送は該当しません。しかし、旅客船は海上運送法の中で「13人以上の旅客定員を有する船舶」となっており、例えば沖縄航路などでは大型旅客船が併せてコンテナ輸送も行っていますが、これは法律上は旅客船による輸送であり、内航海運業には該当しません。また、同様に、長距離のフェリーも実質的には物流機能の方が大きいものの、法律上は旅客船による輸送として整理されています。

 また、この内航海運業を営む者は、オペレーター(Operator)と言われる内航運送業者と、オーナー(Owner) と言われる内航船舶貸渡業者に区分されます。オペレーターは荷主と直接運送契約を行う者で、一般的には自社の保有船舶とオーナーから用船した船舶で輸送を行っています。一方、オーナーは荷主との契約は認められておらず、一般的には船舶と船員を保有し、オペレーターとの間に用船契約を結んで、実際の船舶運航を行っていますが、なかには船舶のみを所有し、他社と裸用船契約を行う形態、船員のみを保有し、他社から船舶を借り受けて用船契約を行う形態があり、後者はマンニング(Munning) 業者と呼ばれています。

 これらオペレーター、オーナーといった内航海運業を営むには、内航海運業法に基づく許可が必要となります。この場合の許可は一定の要件を満たせば取得できますが、オペレーターについてはさらに一定以上の基準船腹量を確保することが要件となっています。なお、オペレーター、オーナーという概念、営業形態は海運一般に見られるものですが、法律上で両者を区分しているのはわが国のみであり、これは零細事業者が大半を占める内航海運業界において事業規模の適正化を図る観点から、昭和41年(1966)より制度化されたものです。

 なお、内航海運を論ずるときには、「カボタージュ(Cabotage)」という用語がよく使われますが、これは、国内輸送については当該国の船舶、企業などに限り、外国船舶による輸送は原則認めないというものであり、米国をはじめ国際的に採用されている制度です。