第1回(2001.07.27)
次世代内航海運懇談会議事概要


議事

(1) 内航海運の現状について
(2) 関係者からの意見聴取
(3) その他

議事概要

 
船員の雇用形態の自由化(個人契約等)については一つの問題提起ではあるが、厚生年金との関係、事故を起こした場合の問題等、現時点では様々な整理すべき課題がある。
 船員法の労働時間の問題、職員法の配乗の問題等に関して、技術の進歩を踏まえ、安全担保のためにどのような体制が必要なのかを改めて考えるべき。
 新しいビジネスとは、現実のマーケットの競争の中から生まれるものであり、何かまったく新しいものが創造されるというよりは、むしろ、誰かが見落としていたニーズに気付くという形態が多い。この点で、船舶管理会社の取り組みは注目に値する。このようなビジネスチャンスを創出していくためにも内航海運業界の実状を明らかにしていくことも重要。
 荷主、オペ、オーナーの誰もが「コスト削減」ということばかりに囚われ過ぎているが、一方で、輸送サービス水準そのものを向上させて高い運賃を得ることも志向すべきではないか。
 内航海運において、よく物流コストが高いと一般的に言われているが、内外価格差調査等を見ると、欧米と比較して特に高くはないというデータになっている。この点について、何故「高い」と言われているのか事務局として整理すること。


懇談会の論点について

T 21世紀型内航海運のあり方
 1.我が国経済活動・国民生活における内航海運の役割
 2.物流に対する経済的・社会的要請
 3.21世紀型内航海運のあり方

U 今後の内航海運行政が取り組むべき課題
 
1.健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備
  (1)事業展開の多様化、新規参入等競争の促進
    ・事業形態区分、参入規制
    ・内航海運暫定措置事業
  (2)市場の透明性の確保
    ・情報の提供
  (3)健全な市場のルールづくり
     ・取引関係のルール
    ・運送約款
 2.より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの提供の支援
  (1)高度で革新的な輸送サービスの提供
      ・新技術の開発・実用化
  (2)良質かつ責任ある輸送サービスの提供
    ・共有建造方式
    ・安全運航のための船舶管理体制
    ・船員の確保
  (3)輸送コストの低減及び安全・環境対策の向上
    ・社会的規制
  (4)循環型社会実現のための基盤整備
    ・静脈物流システムの構築
  (5)物流システム全体の効率性の向上
    ・物流関係事業者との連携


関係者からの意見


(栗林商船・吉祥海運・鉄鋼連盟・石油連盟・セメント協会)


栗林商船且ミ長 栗林 宏吉氏


T 内航海運のあり方

1.わが国経済活動・国民生活における内航海運の役割
 国内基幹産業とともに物流の大動脈という地位は不変。
2.物流に対する経済的社会的要請
 国内産業(特に製造業)がこれ以上海外に流出しないためにも、国内の物流費の逓減は必要。この問題は単に内航海運だけの問題ではないという認識が大切。
3.21世型内航海運のあり方
 設備カルテルだった船腹調整制度とその変形である暫定措置事業から早く脱却し、保護育成の対象を業者から業界に変更する必要がある。

U 今後の行政の取り組むべき課題

@海運自由の原則に立ち返った自由な内航海運を目指し、外航と同じような自由な商売ができるための各法律・規制の見直しを進める。
A船舶の安全にかかわる法律・規則についても現在の技術水準を充分考慮した上での見直しが必要。(航行区域等)
B集荷、配達の低コスト化を目指した海陸一貫の物流業者の育成。トレーラーにかかわるコストや諸規則の見直し。(自動車税、車検制度等)
C港湾の規制緩和、フルオープン化と低コスト化を推進し、国内物流全体のコスト低下を図る。港湾のフルオープン化と低コスト化は内航だけでなく外航も含めた日本海運全体の問題であり、さらには日本の経済的な競争力に大きく影響している。テーマを変えてしっかりした議論が必要。


吉祥海運且ミ長 蔵本由紀夫氏


T 21世紀型内航海運のあり方

@今後の内航海運は、日本国内の様々な物流の中で主力的役割を取戻し、世界的な環境問題への寄与かつ大量効率輸送が可能な唯一の輸送手段と認知されるためにも、安全・環境両面にて足下がしっかりした業界である必要がある。
A社会的にも認知度が低い内航海運の今後は、PR活動を行いながらイメージアップを図るとともに、クリーンなイメージを持たれる業界となるために、上記@を実行していくことが求められる。
B縦割りではなく、行政、内航総連、荷主、陸上、港湾等、物流に携わる全ての連携を可能にする総合物流懇談会開催と具体的方策の検討を早急に行うことで、モーダルシフトを推進するけん引車となる。

U 今後の内航海運行政が取り組むべき課題

@暫定措置事業を継続的実施するための経済的支援(総連合独自の政策をもとに)
A運賃、用船料に係わる契約の遵守に関する規制強化
   契約を遵守しない、軽視されていることに問題あり
B船員雇用形態に関する自由化
  将来、船員保険の徴収金額は高騰の一途(船員数の減少)→負担増
  雇用形態(船保、厚年)→個人契約(職員としての事業主)→
  イ)船員個人の増収(船主負担の分配)及び貯蓄年金と保険選択の自由化
  ロ)船員間の競争→船員能力の底上げ
  ハ)船主経済の健全化
C船舶職員法の船員法見直し
  定員を減少させることが、必ずしも安全を阻害するという常識を覆す
  イ)制令で定める乗り組み基準の緩和または見直し
  ・機関部職員規定の見直しによる乗員の減少
  ロ)新しい基準条件を設定し、条件を満たす会社、船舶にのみ認可するもの
  ・海上運航、積付け掃除、メンテナンスの分離
  ・テクニカルサポート及びデーターロガーの陸上管理等
  ハ)内航海運小型船改革→安全運航の充実
  ・若年船員の確保(少人数運航により乗船期間の短縮)
  ・老齢船員の職場確保(新しい職場の提供:メンテナンス、積付け、掃除要員)
  ・近代化船推進(新しい基準、条件を満たすことでの特典)
  ・環境化対策(近代化船推進の新基準に組み込む)
D検査基準の見直し(いずれか緩和できれば効率性の向上)
  ・中間検査2年目と3年目で、検査項目の分割を認める
  ・5年定期検査間の分割検査を認める(中間検査省略)
  ・ISM取得船の検査項目を緩和し、ISM取得コストの高感を和らげる。
E共同船舶管理会社の推進
  ・内航海運業界の小規模零細性からの脱却し、経営基盤の強化と組織力を活用した管理業務の効率化を図り、荷主、オペレーター等時代のニーズにあった業態へと変化していく。
 ・教育水準の維持による船員の業務に対する質の向上及び効率的な船員配乗を行う。
 ・情報の共有化及び伝達による相互補完と、人、モノ、金等経営資源の有効活用を行うことで、管理船舶に関する様々な自主調整を行う。


住友金属工業(株)鉄鋼業務部専任部長 武藤 直樹氏


T 21世紀型内航海運のあり方

1.わが国経済活動・国民生活における内航海運の役割
 国内輸送機関別輸送量に占める内航海運のシェアは、1999年度、トンキロベースで41%を占めており、省エネ型輸送手段であることも含め、重要な輸送機関である。
 内航海運は重量物の大量輸送に適しており、鉄鋼業でも一次輸送(工場出荷)は内航海運の割合が高く、トン数ベースで66%(2000年度)を占め、今後も利用が進むと思われる。
2.物流に対する経済的・社会的要請
 製造業にあっては、これまで技術革新によりコスト低減を進め、国際競争力強化により生き残りを図っている。内航海運にあっても、企業体力を強化し、省エネ船の開発、RORO船等近代化船への投資、ITを活用した貨物情報システムの構築等コスト低減をさらに進めるべきである。
3.21世紀型内航海運のあり方
 経済環境がますます厳しさを増すなかで、内航海運も長距離・大量輸送という内航海運の特性を生かしつつ、高速化、フェリー、コンテナー等の活用により雑貨等生活関連物資について、トラック事業者等との連携を図りつつ、市場拡大を進め、低コストの輸送サービスを提供することが重要であろう。業界のスリム化、共同化等事業の活性化により、魅力ある産業しての内航海運業を確立することが、今後の発展のキーとなると思われる。

U 今後の内航海運行政が取り組むべき課題

1.内航海運暫定措置事業
 船腹調整制度終了後の暫定的な措置であり、終了期間を明示し早期に終了すべきである。
2.新技術の開発・実用化
 船舶の技術革新を進め、また安全性の向上を図ることは、乗船員の減、省燃費、スピードアップ等さまざまな面からのコスト低減に資する。このためには企業の枠を超えた、研究開発体制の確立が望まれる。
3.物流システム全体の効率性の向上
 製鉄所においても、流通基地の整備、全天候バースの設置等物流基盤の整備を進めてきたが、今後一層の効率化を進めるためには、IT活用による製造、販売、物流システムを構築、メーカー、物流事業者等一体となって取り組む必要があろう。


出光興産梶@前田 泰則氏


T 21世紀型内航海運のあり方

1.われわれ石油業界を初め国内の各産業は、市場システムを通じた国際競争の時代に突入し、生産から消費にいたるトータルコストでしのぎを削っている。したがって、内航においてもコスト、安全サービス両面で国際競争力を持つことが期待されている。
2.そのためには、港湾の整備や荷役の効率化を公的機関や荷主と一体となって推進し、外航船による消費者への直接納入に負けないコスト競争力を確保する必要がある。
3.21世紀型の内航海運会社のあり方としては、国際的な環境・安全基準を満たした上でコスト面でも世界最高水準を目指すのが先ず第一である。また、そのような水準を目指すためには、荷主とは対等な立場でマーケットを通じて公正で透明な商取引を行い、自己責任のもとで確固たる経営を行う会社が多数輩出されることが必要である。
4.そのような自立的経営の実行されている内航海運会社は、必然的に時代の変化を先取りし、時代のニーズにあった新技術の開発や合理化策を自らが打ち出し、社会に対し提言していくようになるべきである。

U 今後の内航海運行政が取り組むべき課題

1.市場環境の整備
(1)新規参入等競争の促進
 ・内航海運暫定措置事業に関しては、この3年間内航船の解撤を促進し、需給環境の整 備に役立ってきたことは認めるが、新規参入者から徴収される建造納付金が競争を阻害していることは間違いなく、見直しの必要がある。
(2)透明性
 ・LTBP(ロンドンタンカーブローカーズパネル)のような透明性のあるスポット市場の形成
(3)健全な市場のルールづくり
 ・船腹需給が反映される透明なスポット市場制度の構築。
 インターネット等を利用したスピードのある取引の仕組みを構築する。また、運送約款については国際基準との整合を図る必要がある。
2.輸送サービス提供の支援
(1)特にコメントなし
(2)良質かつ責任ある輸送サービスの提供。
 ・ISM DOC取得を義務づけし、荷主が船舶をチャーターする時の目安とする。
 ・OCIMFガイドラインによるアルコール、薬物の管理チェック体制の整備。
 ・外国人船員の配乗許可による高品質でコスト競争力のある乗組員の確保。また、その教育システムの整備。
(3)コスト低減及び安全・環境対策の向上
 ・夜間離着桟の許可による船舶稼働率の向上。
 ・船型大型化を阻害している各種規制の見直し。(GRT規制、DWT規制)
 ・港湾整備による船型の大型化を図る。
 ・STCW(船員の訓練、資格等の国際条約)にもとづいた当直体制を満たすために、船員定数の見直し。
 ・環境、安全基準については国際基準の導入検討。


太平洋セメント梶@青山 東男


T 21世紀型内航海運のあり方

1.物流に対する経済的・社会的要請
 日本全体の輸送システムは将来どうあるべきなのか。空、海、陸の分野別にどうなのか、もう少し限定的に言えば、船、鉄道、トラックのベストマッチングはどうなのか、と言う議論が先ずあるべきではないか。その理想像を内航部門でどう実現するかが、これから語られるわれわれの課題になろう。その際、心すべきは少子化傾向への対策、環境負荷の低減、国際競争力増進の3点であろう。少子化は労働力不足たとえばトラック運転手や船員 の不足となって現れる可能性があるが、この労働力を解がいに求めることは(社会的コストの増大を招く恐れが大いにあるという意味で)誤りであり、先ずわが国の内側でやれることを全てやる姿勢が必要だ。そして、私の結論から先に言えば、労働力不足の緩和策として大量輸送機関へのシフト策、特にトラックから鉄道へのシフトをもっと積極的に誘導する必要があると思う。また、大量輸送機関は環境負荷、コストの面でトラックよりは数段優れている。後述する船員不足対策もそうだが、労働力不足問題は早急に対策を立ち上げないと時間切れになり、安易な外国人労働力の利用実績ができてしまう。
 現実のわが国では、輸送市場における正当な競争の結果として、トラック万能主義が成立してしまったのだが、この状況を将来に備えて前述の方向に転換させるためにはそれなりの誘導策が必要であろう。そこで今一度、3つのモードの競争条件を整理し、いわゆる イコールフィッティングの実現を目指すべきではなかろうか。例えば主要な鉄道施設を公的機関が所有して貨物列車ダイヤを一般に開放したならば、トラック業者や海運業者が鉄道輸送に参入するのであろう。鉄道輸送が開放されることによって、これまでの異分野の輸送業者が相互に乗り入れ可能となり、輸送サービスの内容によってモードを変えることができるようになる。距離によって、必要時間によって、輸送ロットによって最適なモードを選ぶことができることになる。主要港にレールが入り、貨車と内航船との間でコンテナーの受け渡しが簡単・迅速にできるようになれば、無益なスピード競争は減少するはずだ。このような日本全体の輸送システムを描いた上で内航のあるべき姿を構築したいと考える。
2.わが国経済活動・国民生活における内航海運の役割
 前項で述べたとおり内航海運の役割はこれから改めて決め直すものではなかろうか。ただし、海運の最も有利な点は『大量輸送・低コスト』にある。従って、内航海運の役割、守備範囲はこの特徴を最大限引き出すシステム作りと同義語となろう。
3.21世紀型内航海運のあり方
 a.内航海運システムのコスト削減
 イ.現実には依然として199サイズの小型船舶が多数稼働しており、全体として低コス トの実現を阻んでいる。船腹調整の終焉によって船主はサイズにこだわる必要がなくなり、むしろサイズアップをしやすい状況が現出している。行政の誘導策が最も必要とする時期になった。
 ロ.船舶は基本的には365日、24H稼働体制であるが、陸上側の荷役関係がその体制に ないところがある。従って今後は荷役のスピードアップも含めて陸上側の柔軟な対応が必要だ。
 ハ.陸上側の対応が可能になっても、保安庁所轄の港湾の安全に係わる諸制限があって効率化を妨げている例がある。船舶の性能は向上しており、何をどうすれば制限が緩和されるのか、問題点の洗い直しと、IT利用による解決策の研究をする必要がある。
 b.低コスト内航船の実現=定員削減
 船員不足の対応として外国人船員を利用することは避けるべきである。むしろ定員削減を実現して対処すべきである。また船舶運航コストの3割以上が船員費であるので、船員 数の削減は内航船のコスト削減策として最も効果的であり、早急に実行案の策定を行う必要がある。
 イ.ハード面では省力化設備と定員削減の関係を明確にし、投資の意志決定を図りやすくする。
 ロ.ソフト面では、狭水道などにおける管制システムを更に充実させてブリッジの負担を軽減することにより定員削減を達成する。一つの手法として…現在、一般の船は自船を中心にレーダーで他船や障害物を監視しているため、ブリッジの情報は客観性に乏しいが、仮に狭水道に差し掛かったときに管制官の見る画面を自船で利用できれば、管制官の指示を明確に受けとることができるようになる。このような管制があれば、AISはもっと生きるのではあるまいか。
 c.21世紀型船舶の検討
 前項の定員問題をクリアーした後の課題として、斬新な21世紀型船舶の検討をしたい。現在の内航船の設備は外航船ほどではないが、やはり自己完結型である。その旧態依然として発想が、船の構造上の進化を妨げていないか。外部支援システムの構築を前提として大幅な設備基準の見直しをできないか。船員の高齢化に対応する新たな設備基準も必要だ。
 d.海運業者の近代化
 船腹調整制度及び暫定措置事業の終了によって、船主の立場は大きく変貌するに違いない。これまではオペレーターに隷属していた傾向があるが、これからは新しい海運業者として生まれ変わり、新しい時代の要求に応える実力を備えて欲しい。

U 今後の内航海運行政が取り組むべき課題…項目だけ列挙

1.(1)船主の意識改革
 (2)船主も含めた海運業者に対する求貨・求船情報(海貨需給情報)
 (3)多層商流の解消
2.(1)管制画面の共有化、省力化エンジンの開発
 (2)サイズアップや21世紀型船舶に対し共有建造を認める方式
   船室の安全確保策
 (3)トラックの規制強化がある
 (4)鉄道との連携