第3回(2001.11.29)
次世代内航海運懇談会議事概要


議事

(1) 内航海運行政の取り組むべき課題について(案)
(2) その他

議事経過

 
事務局より、資料に基づき「内航海運行政の取り組むべき課題について(案)」について説明し、その後、委員等による議論を行った。

議事概要

○競争の促進について
 ・適正な競争を確保するためには、まず何よりも参入の障害を少なくすることが重要であり、登録制の際の条件はできるだけ緩やかなものにすべき。

 ・船舶管理会社については、これまで集約・共同化のネックとなっていた船舶所有権の問題を切り離し、船舶管理業務を共同化しようというものであり、今後の事業展開にとって有効な手段である。小規模なオーナーが各々船員を雇用しているより、船舶管理会社である程度まとまった数で雇用し、教育していくことができれば、荷主のニーズにも対応した船員の質の向上も期待できる。加えて、内航海運のオーナーは、地域性が強いため、集約・共同化して船舶管理会社に取り組みやすいかもしれない。

○市場機能の整備に着いて
 ・内航海運における適切な契約関係の構築及びその透明性の向上を図ることは重要。なお、標準約款は、電子取引等の多様な契約形態も考慮に入れつつ、現実に使いやすいものとなることを念頭に作成すべき。

 ・トラック事業等と異なり、内航海運行に約款の制度が無かったこと自体が不思議であり、今般、導入することは適当。

 ・これまでの適正船腹量の数値自体が必ずしも適切でないとする意見もあるところであり、適正船腹量・最高限度量の設定規制は廃止すべき。

 ・標準運賃・用船料に係る規制はあまり機能しない。むしろ、内航海運の契約の明確化・適正化が重要であり、適正取引ガイドライン(仮称)の策定の意義は大きい。公正取引委員会ともしっかり議論していくべき。今後、内航海運業を下請代金支払遅延等防止法に位置付けることを検討していくことも必要。

 ・競争を促進する一方で、公正で透明な市場の整備に少しこだわっている感がある。例えば、ピラミッド型市場構造においても、ある下請企業はA社に受け入れられない場合でも、B社に受け入れられる場合もある。すなわち、創意工夫をしている者が自由に活動することができる市場構造にすることが重要。あまり、荷主による圧力を過大評価する必要はないのではないか。

 ・内航海運業が下請代金支払遅延等防止法になじむかどうかという議論として、荷主の仕様により船舶を建造する場合は、特殊的投資という見方もできるため、「下請」の概念をあまり広く解釈し過ぎないようにすべき。

 ・下請法では、公正取引委員会は実質的にあまり機能しておらず、中小企業庁が膨大な調査を実施している。全てが処分対象となるものではないが、こうした取り組みの結果、製造業における契約はかなり透明化してきたという評価もある。

○輸送の安全の確保について
 ・競争の促進により、安全に対して必要な投資を削ってでもより低コストで荷物を運ぶおそれもあるので、安全を確保する観点からは、船舶管理規程の届出・変更命令制度の整備は必要。

○その他
 ・今後、モーダルシフトの推進、輸送ニーズへの柔軟かつ機動的な対応等の観点から、行政が行う法制度の見直しのみでなく、民間ベースの必要以上の制限的取り扱い・手続きについても見直していくことが重要。


内航海運行政の取り組むべき課題について


(案)

T 健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備


1.基本的な考え方

 今後、内航海運行政において取り組むべき「健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備」は、以下の3つの基本的な考え方に基づき行うこととするべきではないか。

(1)事業展開の多様化、新規参入等競争の促進

@ 市場における自由な事業活動による競争を促すことは、新規事業者の参入とともに、各事業者の創意工夫に基づく多様な事業展開を通じて、市場全体の活性化に資するものである。こうした競争的な市場環境の整備の結果、コストの低廉化をはじめとする輸送サービスの質の高度化や革新的サービスの創出が図られることが重要である。

A このため、内航海運の事業規制制度について、事業区分を含めた参入規制、内航海運暫定措置事業の運用のあり方等の緩和・見直しを図ることが適当である。

(2)市場機能の整備

@ 競争的な市場環境の整備に当っては、内航海運の現在の市場構造が特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっていること等を踏まえると、参入規制の緩和の取り組みのみでは市場原理の有効かつ十分な機能の発揮は期待できない。

A したがって、参入規制の緩和と併せて、公正かつ透明性の高い市場の構築のための市場機能の整備を図ることにより、健全かつ自由な事業展開が促進されることが重要である。

B このため、内航海運の事業規制制度について、市場の透明性の向上のための仕組み、契約関係の適正化・明確化等必要な市場機能の整備を図ることが適当である。

(3)輸送の安全の確保

@ 内航海運は、参入規制の緩和等により、事業者間の競争が活発化することが予想されるものの、一方で、鉄鋼、石油、セメント等の我が国経済活動及び国民生活に不可欠な多くの産業基礎物資の輸送を担うことから、国民に安全かつ安定的な輸送サービスの提供を図る等の観点からは、その輸送の安全が確保されることが重要である。

A このため、内航海運の事業規制制度について、船舶管理体制の適正化、事業活動の是正措置の整備等輸送の安全の確保のための仕組みの構築を図ることが適当である。

2.事業展開の多様化、新規参入等競争の促進

 事業展開の多様化、新規参入等競争の促進に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)参入規制の緩和

@ 内航海運業の参入については、現在、許可制(100総トン未満等の船舶により事業を行う場合は届出制)とされている。これは、そもそも昭和40年代前半において、9千を超える小規模オペレーター事業者の乱立による過当競争等が懸念された内航海運市場の状況を受けて登録制から規制強化されたものである。

A しかし、事業者数の劇的な減少、多重的な取引構造の形成等内航海運市場の大幅な変化を踏まえ、内航海運の活性化を通じた低コストで質の高い輸送サービスの円滑な提供を図るため、内航海運の市場構造をより競争的なものへと転換し、オペレーターやオーナーといった事業区分にとらわれず、事業意欲のある事業者の新規参入、規模拡大等活力ある事業展開が促進されることが適当である。

B また、100総トン未満等の船舶により事業を行う届出事業者については、曳船をはじめとする建設業に関連した建設資材・機器等の運送が多く、事業規模も非常に小さい(輸送規模(総トン数)は、内航海運業全体の1.9%(平成12年度末)こと等から、今後とも事業規制を)継続する必要性は乏しい。

C このため、参入規制について、例えば以下のとおり見直すことが必要である。

● 許可制(100総トン未満等の船舶を使用する場合は届出制)を、登録制(5年更新、100総トン以上の船舶により事業を行う者に限る)へ変更。

● オペレーター(内航運送業、オーナー(内航船舶貸渡業)の事業)区分を廃止

(2)船舶管理会社に係る制度の整備

@ 近年設立の動きが見られる船舶管理会社については、その経営形態によっては、アウトソーシングの活用による輸送コストの低減、船員の雇用・教育体制の向上等に寄与するとともに、とりわけオーナー事業を行う事業者の今後の事業展開の多様化・円滑化を推進する観点から有効な手段である。

A このため、例えば以下のとおり船舶管理会社による事業活動の円滑化に係る制度を整備することが必要である。

● 船員職業安定法等船員関係制度における船舶管理会社の位置付けの整理・明確化等

(3)暫定措置事業の運用の弾力化(※)

(※ 現在、本懇談会の下に設置された暫定措置事業部会において、同事業に係る諸課題を含むあり方について検討を行っており、第4回懇談会においてその検討結果の報告を行う予定。以下同じ) 。

3.市場機能の整備

 市場機能の整備に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)運送約款の作成

@ 内航海運の市場構造は、特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっており、契約関係の透明性に欠けることから、荷主企業との公正な取引関係の構築、事業意欲のある事業者の積極的な参入等の障害となっている面も少なくない。

A 今後、参入規制の緩和等による健全かつ自由な事業展開の促進を図るためには、公正かつ透明性の高い市場の構築のための取り組みを進めることが重要であり、こうした観点から、内航海運における適切な契約関係の構築及びその透明性の向上を図ることが適当である。

B このため、後述する適正取引ガイドライン(仮称)等に係る取り組みのほか、例えば以下のとおり運送約款に係る制度を整備することが必要である。

● オペレーター事業を行う事業者について、運送約款の届出・変更命令制度を整備

 (この場合、運送約款の変更命令制度は、とりわけ雑貨輸送等不特定多数の荷主の利便性の確保を優先する観点から、コンテナ船、RORO船等の雑貨を中心とする輸送に限定することも検討するべきではないか。)

● 標準運送約款の公示

 (この場合、内航海運においては、鉄鋼船、タンカー、セメント専用船等船種毎に輸送実態が異なることを踏まえると、例えば、船種毎に標準運送約款を作成することも検討するべきではないか。)

(2)適正取引ガイドライン(仮称)の整備

@ 内航海運の市場構造は、特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型であり、いわゆる荷主優位性が強く、その結果、市場原理の有効かつ十分な機能の発揮が困難となっている面も少なくない。

A したがって、市場原理と自己責任の考え方の下、健全かつ自由な事業展開を促進するため、参入規制の緩和等と併せ、荷主、オペレーター及びオーナー間における取引関係の適正化を図ることが適当である。

B このため、例えば以下のとおり公正な取引ルールを整備することが必要である。

● 内航海運業に関する適正取引ガイドライン(仮称)の策定及びその適切な運用

 (この場合、同ガイドラインの策定に際し公正取引委員会の協力を得るほか、将来的には実態を踏まえ、内航海運業を下請代金支払遅延 等防止法の対象とすること等についても検討するべきではないか。)

(3)適切な情報の開示

@ 今後、市場原理が有効かつ十分にその機能を発揮するために必要な市 場機能の整備として、前述した運送約款や適正取引ガイドライン(仮称)に係る取り組みのほか、船腹需給の動向・見通し、運賃・用船料水準等内航海運市場に係る情報を把握するとともに、これを適切な形で開示することが適当である。

A なお、従来の適正船腹量の策定・最高限度量の設定規制は、かつてのスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業の実施を前提とした制度であり、今後、内航海運の市場構造をより競争的なものへと転換していく観点から廃止することが適当である。

B また、標準運賃・用船料に係る規制(設定・告示・勧告)も、いわば一種の公定価格を示すこととなるため、市場原理と自己責任の考え方とは相容れない面があることから廃止することが適当である。

C このため、行政による情報開示の取り組みについては、例えば以下のとおり内航海運市場に係る情報の把握及びその適切な開示を行うことが必要である。

● 報告・聴取規定に基づき、オペレーター事業を行う事業者に対して事業活動についての一定の報告を義務付けるとともに、これらを活用して船腹需給状況、運賃・用船料水準等の情報を定期的に開示(この場合、行政による取り組みは、あくまで内航海運全体としての情報の把握・開示が適切であり、例えば、個別具体的な運賃・用船料の実態把握については、まず事業者団体において適切に取り組むことが必要ではないか。)

4.輸送の安全の確保

 輸送の安全の確保に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)船舶管理規程(仮称)の作成

@ 今後、物流効率化等に対応してより低廉な輸送サービスの提供が求められる一方で、内航貨物船による海難事故が必ずしも少なくない現状を踏まえると、参入規制の緩和等による競争の促進と併せ、産業基礎物資の輸送の太宗を担う内航海運業の輸送の安全の確保のための取り組みを促進することが適当である。

A 近年においては、旅客船の運航管理に係る規制強化、内航貨物船のISMコードの任意取得の増加等、とりわけ保守整備、船員配乗、運航管理等の船舶管理業務の適切な実施に係る制度構築・運用が図られてきているところである。

B このため、内航貨物船に係る輸送の安全を確保する観点から、例えば以下のとおり船舶管理業務を適切な体制の下で安全に実施するためのマニュアル(船舶管理規程(仮称)に係る制度を整備することが必要で)ある。

● 内航運送の用に供する船舶を所有する内航海運業者について、当該船舶に係る船舶管理規程(仮称)の届出・変更命令制度を整備

(2)事業活動の是正措置の整備

@ 現行の内航海運業法においては、例えば内航海運業者の事業活動において輸送の安全を阻害している事実があると認める場合であっても、法的な是正措置を講じることができないこととなっている。

A 今般、参入規制の緩和等により事後チェック型の行政への転換を図る中で、海上における輸送の安全を確保する観点からは、行政が事後的に事業活動の是正を命じるための手段を整備することが適当である。

B なお、現行の内航海運業における事業改善の勧告規定は、その内容が事業の合理化に関するものに限定されているが、今後、内航海運の市場構造が、市場原理と自己責任の考え方の下、より競争的なものに転換していく中で、事業の合理化については専ら事業者自身の経営判断に基づき主体的に取り組むべきである。

C このため、例えば以下のとおり輸送の安全の確保のために行う是正命令に係る制度を整備することが必要である。

● 船舶管理規程(仮称)の遵守等輸送の安全の確保のために必要な事業活動の是正措置を命じることができる制度を整備

5.実施スケジュール等

(1)実施スケジュール

 「健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備」のための諸施策の実施スケジュールは、例えば以下のとおり進めることとするべきではないか。

@ 内航海運業法等法律改正を要するものは、関連の諸制度の検討等と併せ、次々期通常国会に所要の法律案を提出の上、平成16年度内に措置。

A 暫定措置事業の運用の弾力化(※)

(2)内航海運組合法の取扱い

 内航海運組合法は、暫定措置事業の実施の法的根拠であることから、同事業の廃止の段階において抜本的見直しを行うものとし、基本的に、現時点では現行制度を維持することとするべきではないか。