第4回(2002.1.25)
次世代内航海運懇談会議事概要


議事

(1) 内航海運行政の取り組むべき課題について(U より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの構築)について(案)
(2) 暫定措置事業部会の検討結果報告
(3) その他

議事経過

 
事務局より、資料に基づき「内航海運行政の取り組むべき課題について(案)」及び「暫定措置事業部会検討結果」について説明し、その後、委員等による議論を行った。

議事概要

○社会的規制の見直しの実施期限を明確にしたことは、これまでと比べて大きな前
 進であり評価できる。なお、ビジョン全体の具体策を実施した結果、今後、内航海
 運がどうなるのか、世の中がどう変わるのか、アウトカムを示すことも工夫してはど
 うか。

○スーパーエコシップ等新技術の研究開発は積極的に進めるべきであるが、結果と
 して実用化できるかどうかが重要。ニーズや現状を十分考慮し、マーケティングに
 根ざした研究開発を行うことが必要。

○今後、新技術の開発や船舶建造支援にあたっては、物流ネットワーク解析等プロ
 ジェクト・ファイナンス的な評価手法を取り入れることが必要。

○実効性のあるモーダルシフトの推進のためには、内航海運とともにフェリーの活性
 化が重要なテーマであり、今後、必要に応じて行政によるモーダルシフト推進のた
 めの新たなインセンティブ措置の検討等を進めることが必要。

○現在不景気だからこそ、効率化を進め、モーダルシフトや静脈物流等の輸送需要
 拡大に資する施策を推進することが必要。

○暫定措置事業部会の検討結果に基づき、内航総連(内航海運業界)と国土交通省
 との間で今後の暫定措置事業の運営方法の改善等について早急に検討に着手す
 ることが必要。


内航海運行政の取り組むべき課題について


(案)

U より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの構築



1.基本的な考え方

 今後、内航海運行政において取り組むべき「より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの構築」は、以下の3つの基本的な考え方に基づき行うこととするべきではないか。

(1)競争力のある高度かつ効率的な輸送サービスの構築

@ 内航海運が我が国の基幹的輸送モードとして、物流効率化、環境保全等経済的
 社会的要請に対して積極的にその役割を果たしていくためには、より低コストで質
 の高い輸送サービスの構築を図ることによって内航海運自体の競争力の向上を目
 指すことが重要である。

A このため、経済性に優れ環境負荷の大幅な低減を可能とする次世代内航船(ス
 ーパーエコシップ)等新技術の研究開発の推進、及びその普及を図るとともに、船
 舶・船員分野に係る規制については、フェリー等旅、、客船も視野に入れつつ技術
 革新の成果や経済社会情勢の変化を踏まえ、見直しを行うほか、安全性に係る評
 価を行う手法について検討を進め、総合的に評価を行う仕組みの構築を図ること
 が適当である。

(2)良質な輸送サービスの円滑な提供体制の確保

@ 競争力のある高度かつ効率的な輸送サービスの構築とともに、こうした輸送サー
 ビスが、国・民間等関係者の適切な役割分担の下で円滑に提供されるための環境
 整備を図ることが重要である。

A このため、良質な内航船舶ついての適切な建造支援の仕組み、優良な船員の
 安定的な確保のための諸施策の充実を図ることが適当である。

(3)全体効率的な物流システムの実現

@ 我が国経済社会の変化に伴い、高度化・多様化する輸送ニーズに的確に対応す
 るためには、内航海運自体の輸送サービスの充実はもとより、外航海運やトラック・
 港湾運送等他の物流関係部門と十分に連携しつつ、物流システム全体として効率
 化・低廉化を図り、競争力の向上を目指すことが重要である。

A このため、ドア・トゥー・ドアの一貫輸送サービス提供に資する利用運送事業制度
 の見直し、物流の情報化・標準化等を通じた他の物流事業者との連携の推進のほ
 か、港湾荷役サービスのより一層の効率化、モーダルシフトの推進や静脈物流ニ
 ーズへの対応を図ることが適当である。

2.競争力のある高度かつ効率的な輸送サービスの構築

 競争力のある内航海運の実現のための高度かつ効率的な輸送サービスの構築に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)新技術の開発・普及

 現在、内航海運においては、長引く不況の影響により輸送需要が低迷する一方、荷主企業の物流コストの削減等輸送の効率化への対応がますます求められるようになってきており、事業者にとっては厳しい経営環境の中、その活性化が重要な政策課題となっている。
 船舶の技術開発・普及は、輸送の効率化を促進するための有効な手段であるものの、相応の初期投資や技術水準を必要とするため、行政と民間が一体となった取り組みを計画的に進めることが適当である。

@ 次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発・普及の推進

1) 平成13年度より研究開発が開始されている次世代内航船(スーパーエコシップ)
 は、ガスタービン対応型新船及び電気推進式二重反転ポッドプロペラを用いた画
 期的な新型船であり、従来の内航船と比較して、環境負荷の低減( CO2:3/4 、
 NOx:1/10 、SOX:2/5) 、経済性の向上(総合効率約10%向上、貨物倉約20%増
 加、船内労働環境・操船性の大幅な改善(騒音:1/100 、船上メンテナンスフリー、
 真横移動可能)が期待される。

2) このように優れた特性を有する革新的な船舶の研究開発及び普及の取り組みを
 以下のとおり進めることにより、内航海運の活性化を図ることが必要である。

● 次世代内航船(スーパーエコシップ)の早期の研究開発及び普及に向けた環境整
  備

(実施スケジュール)
 平成17年度までのできるだけ早い時期までに実証実験及び普及に向けた環境整備を終了

A 高度船舶安全管理システムの研究開発・普及の推進

1) 高度船舶安全管理システムは、最新のIT技術を活用した船舶の推進機関等の遠
 隔監視・診断システム、陸上支援システム及びこれを基礎とした新たな運航管理シ
 ステムを組み合わせた革新的な安全管理システムである。
   同システムの導入により、従来型船舶と比べ、運航効率性及び安定性向上、ヒュ
 ーマンエラーの減少、保守整備の省力化・コスト削減等の船舶運航の安全性と海
 上物流の効率性の飛躍的な向上が期待される。

2) このように新技術を用いた安全管理の高度化による取り組みを以下のとおり進め
 ることにより、内航海運の活性化を図ることが必要である。

● 高度船舶安全管理システムの早期の研究開発及び普及に向けた環境整備

(実施スケジュール)
 平成16年度までのできるだけ早い時期までに実証実験及び普及に向けた環境整備を終了

B TSL(テクノスーパーライナー)の普及の推進

1) TSL(テクノスーパーライナー)は、従来の船舶の2倍以上の高速航行が可能であ
 り、航空機やトラックに比べて大量の貨物が積載できるほか、500海里以上の航
 続距離を有するとともに、荒天時においても安全に航行できる等、画期的な超高速
 船として既に開発されているものである。

2) TSLの投入航路については、@国内海上物流の基幹航路、A離島航路、Bアジ
 ア近海航路の各分野が想定されている。第1船は、そのうち離島航路である小笠
 原航路における貨客船を前提に、平成13年度内にTSLを建造・保有して運航事業
 者にリースする保有管理会社を設立し、造船所との間で船舶建造契約及び運航事
 業者との間で船舶用船契約を結ぶこととなっている。
   第2船以降(同保有管理会社が保守管理を実施)については、国内航路での旅客
 カーフェリー、コンテナ船又はRORO船としての就航を目指した取り組みが進めら
 れている。今後、TSLを活用した超高速海上輸送ネットワークの構築を通じた新し
 い市場の創出が期待されるところであり、内航海運への活用を含め、引き続きTS
 L実用化の促進を図ることが適当である。

(2)社会的規制の見直し
 内航海運分野における船舶の性能・構造要件、船員の乗り組み体制等に関するいわゆる社会的規制については、輸送の安全の確保はもとより、公正かつ競争的な市場環境の整備を図る観点から、適切な基準を策定するとともに、この基準が遵守されるよう行政、事業者等海事関係者が一体となって取り組むことが重要である。
 また、基準の策定や見直しを行うに当たっては、新技術の活用等を図りつつ、十分な安全管理体制を構築している事業者については、その安全管理能力を活用し、行政の関与を極力減らす等のインセンティブを与えることにより、保守整備の省力化、事務作業の効率化、コスト削減等が図られることから、こうした自主的取り組みを促進することが重要である。さらに、船舶の性能・構造要件に関する基準と船員の乗り組み体制等に関する基準の整合性にも配慮する必要がある。

@ 船舶の性能・構造要件に関する規制の見直し

1) 近年の科学・工学技術の進歩は、情報通信分野をはじめとして、船舶を含む全て
 の分野において目覚しいものがあり、船舶の性能・構造要件に関する規制について
 は、技術の進展、経済情勢の変化等を踏まえ、引き続き柔軟かつ適切に見直しを
 行っていくことが適当である。

2) 船舶の性能・構造要件に関する規制は、設計の自由度を高め、各企業における
 技術開発努力を促進する観点から、平成9年度より順次、一律に船舶の仕様によ
 り規定していた基準を、原則、基準設定の目的( ) を示した上で性能を判断し得る
 定量的な数値による基準性能基準化に改めており、今後とも、こうした取り組みを
 継続して実施することが適当である。

3) また、事業者の利便性向上の観点から、土・日等の検査については平成10年度
 以降船舶検査の多い地域では既に広く実施されているところであるが、こうした取
 り組みについても、船舶の実働予定等を勘案して、さらにきめ細かく対応していくこ
 とが適当である。

● 船舶の性能・構造要件の性能基準化を継続的に実施

(実施スケジュール)
 逐次、省令改正等により対応

● 土・日等の船舶検査の充実

(実施スケジュール)
 船舶の実働予定等を勘案し、よりきめ細かく対応できるものから順次実施

A 船員の乗り組み体制等に関する規制の見直し

1) 船員の乗り組み体制は、船員法における労働時間規制を満たす定員・航海の安
 全の確保のために必要な員数、船舶職員法における船舶職員配乗基準等を考慮
 して定められている。これらの規制については、船舶の航行の安全の確保を基本と
 しつつ、技術革新の進展や社会経済情勢の変化に適切に対応し、以下の方向で
 一体的かつ総合的に見直しを行うことが必要である。

イ) 経済的・社会的実態を踏まえて、規制の実効性の確保にも十分留意しつつ、可能
 な範囲で規制内容の弾力化・最小化を図る。

ロ) 労働と生活の場が同一である特殊な労働の実態を十分に踏まえて、航海及び船
 内の安全を確保することはもとより、適正な労働環境を確保する。

ハ) 機関部等の技術革新の進展等を踏まえ、効率的な船舶職員の配乗体制の再構
 築を図る。

● 船員の乗り組み体制について、有識者、使用者、労働組合等で構成される「内航
 船乗り組み制度検討会(仮称」を立ち上げ、総合的)な検討を実施

(実施スケジュール)
 上記検討会を平成14年早期に立ち上げ、総合的な検討を15年度内を目途に終了し、結論の得られたものから措置

2) 海員名簿、船員手帳、海技免状を地方運輸局等の窓口に提示して行う雇入れ契
 約の公認については、雇用関係の確定、乗組み体制のチェック、乗船履歴の記録
 等の観点から諸外国でも同様の手続が行われている。
   しかし、その申請手続の負担の軽減を図るための当面の措置として、電子政府
 の導入と併せ、就業規則、労働協約等が定められており、労務管理が適切に行わ
 れている船舶については、事前に登録の上、当該船舶を管理する事業所単位で電
 子申請することを可能とする登録公認制(仮称)を以下のとおり導入することが必
 要である。

● 登録公認制(仮称)の導入
 (実施スケジュール)
 平成14年度内に情報システム構築、関係省令等改正し、15年度以降、条件に合致する船舶・事業所を対象として逐次実施

B 技術革新に伴う社会的規制の見直し

1) 現在、次世代内航船(スーパーエコシップ)、高度船舶安全管理システム等革新的
 な技術の開発が進められているが、このような新技術の開発に当たっては、経済
 的な効果や安全・環境への影響等を明確にすることはもとより、新技術に対応した
 社会的規制のあり方を併せて検討することが重要である。

2) 次世代内航船(スーパーエコシップ)は、従来のディーゼルエンジンの船舶と異な
 り、スーパーマリンガスタービンの使用(同ガスタービンのユニット化により機関の
 検査の省力化も可能)により機関部の船上メンテナンスフリー等の船内作業の大
 幅な軽減が実現できるため、これに対応した船舶の性能・構造要件、検査項目及
 び航行距離に応じた検査時期の設定を検討するとともに、機関部等の技術革新を
 踏まえた効率的な船員の乗り組み体制のあり方についても検討することが必要で
 ある。

3) 高度船舶安全管理システムは、船舶の機関等の状態を陸上から遠隔監視・診断
 すること等により、船陸一体となった安全管理体制の構築を目指すものであり、同
 システムの導入により十分かつ合理的な安全管理体制の構築が可能となる。この
 ような安全管理体制を構築している事業者については、その安全管理能力を活用
 し、行政の関与を極力減らす等インセンティブを与えることにより、一層の保守整備
 の省力化、コスト削減等が図られる。
   従って、同システムを採用し、かつ、国際安全管理規則( ISMコード)に基づき作
 成した安全管理手引書を有する事業者が運航管理する船舶については、機関に
 関する実質的な検査の省略及び機関に関する検査時期の弾力化等を検討すると
 ともに、機関部等の技術革新を踏まえた効率的な船員の乗り組み体制のあり方に
 ついても検討することが必要である。

● 次世代内航船スーパーエコシップに係る船舶の性能・構造要件、検査項目及び航
 行距離に応じた検査時期の設定並びに機関部等の技術革新を踏まえた効率的な
 船員の乗り組み体制のあり方の検討

● 高度船舶安全管理システムに係る実質的検査の省略、機関に関する検査時期
 の弾力化等及び機関部等の技術革新を踏まえた効率的な船員の乗り組み体制の
 あり方の検討

(実施スケジュール)
 次世代内航船(スーパーエコシップ)及び高度船舶安全管理システムの実証実験の際には、船舶検査、船員配乗等関連する社会的規制の見直しに係る実証実験も併せて行うこととし、次世代内航船(スーパーエコシップ)及び高度船舶安全管理システムのそれぞれの実( 、用化予定時期まで高度船舶安全管理システムは平成16年度まで次世代内航船(スーパーエコシップ)は平成17年度まで)に検討の上措置

C 安全評価手法の構築
1) 新規制の導入、既存の規制の改正等の社会的基準の見直しに当たっては、行政
 はその見直しに係る社会的規制の合理性及び妥当性について評価を行い、その
 結果を国民に提供し、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすことが重要である。

2) こうした評価の対象としては、安全運航(輸送の安全の確保)や輸送の効率化の
 観点を踏まえ、船舶構造・設備要件のみならず、配乗要件や運航管理などのソフト
 面の要件も含めるべきであり、その評価手法を確立することが適当である。

3) 現在、行政において、船舶の構造・設備要件に関する基準の見直しに関して「船
 舶の総合的安全評価(海難事故等のデータに基づき、」各種安全対策について、費
 用対効果等を考慮し、合理性を比較評価すること)の手法の確立に取り組んでいる
 ところであるが、今後は船員の乗り組み体制等に関する基準の見直し等について
 も、同様の安全評価手法を構築することが必要である。

● 船舶の総合的安全評価の手法の確立

(実施スケジュール)
 平成17年度までに順次評価手法を確立し、これと並行して技術規制の見直しに係る安全評価を適宜実施

3.良質な輸送サービスの円滑な提供体制の確保

 良質な輸送サービスの円滑な提供体制の確保に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)運輸施設整備事業団の船舶共有建造業務の重点化

@ 内航海運業界においては、長引く不況の影響により国内貨物の輸送需要が低
 迷する一方で、荷主企業の物流コストの削減・輸送の効率化への対応が益々求め
 られるようになってきていることから、船舶の積載重量(又は積載内容)の増加、航
 海速度の向上、IT技術を用いた高度船舶管理等荷役・運航の効率化等に資する
 高度な船舶の建造を促進することにより、一層の物流効率化を図っていくことが適
 当である。

A また、地球温暖化問題等深刻化する環境問題への対策として、環境負荷の少な
 い大量輸送機関である内航海運の活用を促進するため、モーダルシフト対応船舶
 (RORO船、コンテナ船、フェリー等)の建造を促進するとともに、船舶単体のエネ
 ルギー消費効率の向上を図ることが重要である。

B このため、以下のとおり運輸施設整備事業団の船舶共有建造業務については、
 政策課題への対応の明確化、国内海運業界の構造改革の促進及び民業補完の
 観点から業務内容の再構築を行い、スーパーエコシップ等新技術の実用化の動向
 等も踏まえつつ、物流の効率化、環境対策等の政策課題への一層の重点的対応
 を図ることが必要である。
   また、船舶共有建造業務については、内航海運の活性化に資するため、事業者
 に活力ある事業展開を行うインセンティブを与える仕組みを構築することが必要で
 ある。

● 共有建造条件を現行の船種別建造から政策目的別建造に変更
(政策目的に合致しない船舶は建造対象から除外)

● 政策目的別建造に伴う分担割合(共有比率)の見直し

(実施スケジュール)
 速やかに措置が可能なものについては、平成14年度内のできるだけ早い時期に措置するとともに、15年度以降検討の上実施できるものから順次措置

(2)優良な船員の確保

 船舶の運航の技能と経験を有する船員は、内航海運にとどまらずあらゆる海事産業のヒューマンインフラであり、優良な船員を安定的に確保することは海事産業の発展、良質な輸送サービスの提供のために不可欠な要素である。特に、内航海運においては、船員の高齢化が顕著であり、若年船員を確保し、将来にわたって安定した労働力を確保することが重要な課題となっている。
 優良な船員を安定的に確保するためには、船員の教育・育成・就職の充実により若年船員の確保を図ること、離職した船員が再度船員として活躍できること、労働力の移動を円滑に進めること、安全かつ適正な労働環境の整備を図ること等の諸施策に取り組んでいくことが重要である。

@ 船員の教育・育成

1) 内航海運業界においては、若年船員を採用し、将来的な船員不足に備えたい意
 向はあるものの、若年船員は即戦力がない、また、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニ
 ング)を行うとコスト高となる等の問題点が指摘されているところである。

2) このため、より即戦力のある内航船員の養成を進める観点から、平成13年10月
 に産・官・学により設置した「内航船員養成における即戦力化等に係る検討委員
 会」において、各教育機関が実施する即戦力化の方策のあり方、若年船員の就業
 機会の拡大、OJTの充実方策、これらに係る国の役割等について検討されてお
 り、平成13年度末までに同委員会における意見を取りまとめた上で、速やかに必
 要な施策を講じていくことが適当である。

A 海上労働力移動の円滑化

1) 優良な船員の安定的な確保のためには、若年船員の教育・育成と併せて、一旦
 離職した船員が再度船員として活躍できる場を紹介していくことが重要であり、船
 員職業安定所における職業紹介等の業務について一層の効率化を図るとともに、
 求職者及び求人者のニーズに迅速かつ適切に対応することが適当である。

2) 現在、船員職業紹介事業及び船員労務供給事業については、船員職業安定法に
 より原則として政府以外の者が行うことを禁止しているが、内航業界における将来
 的な船員不足を考えれば、企業間で船員を移動する必要が生じてきている等、船
 員労働力規制の新たなスキームが求められる状況になっている。
  特に、労務供給事業については、OJTの余裕のない中小事業者に対し大規模事
 業者等で教育された船員を供給することは、船員の教育機会の確保、中小船社に
 おける優良船員の確保、船員の資質の向上、ひいては雇用の安定に資することと
 なる。
  同事業への民間参入については「規制改革推進3ヶ年計画(平、」成13年3月30
 日閣議決定)に「船員職業紹介事業及び船員労務供給事業について、学識経験
 者、労使の代表をメンバーとする国土交通省の「船員職業紹介等研究会」において
 検討が行われており、船員労働の状況を勘案しつつ、一定の要件を満たす者が許
 可を受けて有料で行うことを認める方向で、出来る限り早期に結論を得る(船員中
 央労働委員会の意見聴取が必要」旨盛り込まれており、同研究会にお)いて早期
 に結論を得るよう取り組むことが必要である。

3) このため、海上労働移動の円滑化の観点から、以下のとおり職業紹介事業等に
 係る制度の見直し、電子化による職業紹介手続きの効率化を図ることが必要であ
 る。

● 船員職業紹介事業及び船員労務供給事業への民間参入
● 求人・求職情報の電子申請化、求人・求職情報のデーターベース化等電子化シス
  テムの構築

(実施スケジュール)
・船員職業安定法等法律改正を要するものは、平成15年の通常国会に所要の法律案を提出の上、平成16年度内に措置

・電子化システムの構築については、平成14年度内に措置

4.全体効率的な物流システムの実現

 全体効率的な物流システムの実現に係る課題については、行政は以下のとおり取り組むこととするべきではないか。

(1)海陸一貫輸送サービスの充実
 内航海運サービスについては、外航海運やトラック・港湾運送等他の物流関係部門との連携がますます重要になっていることを踏まえ、海陸一貫輸送サービスの充実を図る観点から、以下の施策を推進することが必要である。

@ 海運に係る利用運送事業制度の見直し
1) 幹線の利用運送と両端の集配輸送を一貫して行う第二種利用運送事業は、トータ
 ルとしての物流システムの高度化・効率化を図るとともに、不特定多数の荷主の貨
 物を集めて混載する雑貨の積み合わせ輸送を推進する上で中心的な役割を担うこ
 とが期待される。

2) しかしながら、現在、第二種利用運送事業として選択できる幹線輸送は鉄道と航
 空に限られており、今後、後述するモーダルシフトの推進、静脈物流ニーズへの対
 応等を図る観点からは、このような限定を廃止し、海運についても一貫輸送サービ
 スが円滑に提供される仕組みの構築を図っていくことが適当である。

3) このため、第二種利用運送事業制度について、以下のとおり関係諸制度との調整
 を十分に行った上で見直しを行うことが必要である。

● 海運に係る第二種利用運送事業を可能とする制度の整備

(実施スケジュール)
 貨物運送取扱事業法の改正により平成15年度内に措置

A 港湾荷役の効率化・サービスの向上

1) 陸上輸送と海上輸送の結節部である港湾運送事業(港湾荷役)の効率化・サービ
 スの向上については、内航海運の競争力向上の実効性を高めるとともに、全体効
 率的な物流システムの実現を図る観点から、積極的に推進していくことが適当であ
 る。

2) 港湾荷役については、平成12年11月に、京浜、名古屋、神戸等主要9港におけ
 る需給調整規制の廃止等の規制緩和を内容とする改正港湾運送事業法が施行さ
 れ、その後、新規参入が実現する等その成果が徐々に現れてきているところであ
 るが、今後も改正法の定着を着実に推進し、新規参入、運賃・料金の多様化等を
 通じた港湾荷役の更なる効率化・サービスの向上を推進すべきである。
  また、主要9港以外の港における需給調整規制の撤廃については、平成15年度
 中に結論を得るべきとの平成13年12月7日の総合規制改革会議の答申を最大
 限尊重し、取り組んでいくことが適当である。

3) さらに、港湾の24時間フルオープン化については、その推進が平成13年7月6
 日に閣議決定された「新総合物流施策大綱」に盛り込まれ、その早期実現を図る
 ため国土交通省においては、港運事業者船社、荷主、港湾管理者、行政の関係者
 による港湾物流効率化推進調査委員会を設置し、諸課題についての検討を鋭意
 実施してきている。
  こうした検討の成果も踏まえ、港運労使間で鋭意協議が行われた結果、平成13
 年11月には、荷役作業は元旦を除き364日24時間実施すること及びゲート作業
 は土日及び祝日も平日と同様に8:30〜20:00まで実施することが労使間で合意
 された。
  引き続き、港湾荷役のより一層の効率化・サービスの向上を目指し、情報化の推
 進、作業の共同化等による事業基盤の強化を進めるとともに、各港毎の実情に応
 じた諸課題を解決するため、主要港毎に港湾物流の効率化・活性化を検討する場
 を設置する等、港湾物流関係者の取り組みを積極的に支援することが適当であ
 る。

B 物流の情報化・標準化

1) 内航海運業の取引関係においては、長年の取引関係又は商慣行により、貨物運
 送、船舶の貸借等の取引行為を当事者間の面談、電話連絡等を通じて行っている
 場合が少なくない。他産業における商取引や情報交換のIT化が進展してきている
 状況を踏まえると、今後、物流効率化や海陸一貫輸送サービスの充実を図る観点
 からは、こうした取引関係の早急な効率化・システム化を進めることが重要である。

2) このため、ITの活用を通じて、荷主企業毎に固定的となっている市場を開かれた
 ものへと転換し、これにより船舶の運航効率・積載効率を高めるとともに、荷主、内
 航海運事業者、港湾運送事業者、貨物自動車運送事業者等の内航海運に関連す
 る事業者間のEDI化を推進し、国内物流の効率化を図ることが適当である。

3) とりわけ、荷主企業とオペレーター事業者間で締結される運送契約、オペレーター
 事業者とオーナー事業者間で締結される用船契約又は運航委託契約に必要な情
 報をインターネットを通じて検索し、効率的かつ迅速に交渉・成約することができる
 新たな情報システムモデルを開発すること等により、内航海運分野におけるIT化を
 促進することが適当である。

(2)モーダルシフトの推進

 前述のとおり、平成9年12月の気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議で採択された「京都議定書」において、我が国は1990年の水準より6%の二酸化炭素の削減の達成が義務付けられる等、地球的規模での環境保全の取り組みは急務となってきている。
 また、平成13年10月の気候変動に関する国際連合枠組条約第7回締約国会議で京都議定書の中核的要素に関する基本的合意(ボン合意)を法文化する文書が採択され、京都議定書の実施に係るルールが決定されたことにより、先進国等の京都議定書批准が促進される見通しとなっている。
 運輸部門については国内全体で排出される温室ガスの約2割を排出しており、京都議定書の目標達成のためには、同部門の排出抑制に強力に取り組むことが求められる。仮に何の対策も取らない場合は、2010年には運輸部門全体で、1990年比のCO2排出量が40%増となると見込まれることから、目標達成のためにCO 2排出量を炭素換算で1300万トン削減することが必要となる。
 したがって、自動車に比べて環境負荷が小さい内航海運の輸送特性に鑑み、自動車から内航海運へのモーダルシフトの一層推進を図ることが重要である。新大綱においても、平成22(2010)年までにモーダルシフト化率を50%を超える水準とすることを目標としているが、更に以下のとおり内航海運へのモーダルシフトのための取り組みを積極的に推進すること等により、具体的には、内航海運の2010年度の輸送分担率を1998年度の41%から3%以上向上させるとともに、炭素換算でCO2排出量の100万トン削減を目指すことが必要である。

@ 内航海運の競争力強化

 今後更にモーダルシフトを効果的に推進していく観点からは、経済性に優れ環境負荷の小さな次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発を行い、21世紀型内航海運の中核船として広く普及を進めるとともに、本ビジョンに盛り込まれた事項(事業規制の見直し、社会的規制の合理化・適正化等を進めること)を早期に具体化することにより、内航海運自体の競争力強化を図ることが適当である。

A モーダルシフトに資する物流体系の構築

1) 平成14年度予算に盛り込まれている幹線物流の環境負荷低減に関する実証実
 験支援措置を活用し、行政の支援の下、荷主、内航海運事業者、フェリー等の関
 係者が協調・連携してモーダルシフトに取り組んでいくことが検討されているが、モ
 ーダルシフトの実効性を高めるためには、こうした環境負荷の小さい物流体系の構
 築のための取り組みを今後とも推進していくことが適当である。

2) また、モーダルシフトの基盤整備として、運輸施設整備事業団の共有建造業務の
 重点化等によるRORO船、コンテナ船、フェリー等の建造支援の推進、東京湾等
 における湾内航行時間の短縮、湾内ノンストップ化、港湾の24時間フルオープン
 化等の海上ハイウエイネット、、ワークの構築複合一貫輸送に対応した内貿ターミ
 ナル等の物流拠点複合一貫輸送機器等の整備促進等を進めるとともに、海運を
 利用したドア・トゥー・ドアのサービスの提供を可能とする利用運送事業制度の見直
 しを図ることが適当である。

● モーダルシフトについての実証実験の実施
● 海上ハイウェイネットワークの構築を継続的に推進
● 内貿ターミナル等の物流拠点、複合一貫輸送機器等の整備促進を継続的に推進

(実施スケジュール)
 モーダルシフトの実証実験については、平成14年度以降、関係者の実証実験計画に基づいて逐次実施、それ以外は継続的かつ計画的に施策を実施

(3)静脈物流システムの構築

 成熟化を迎えた我が国経済社会は、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から、循環型経済社会への転換が急務となっている。また、静脈産業の市場規模の急激な拡大も予想されており、平成9年で24.7兆円であったものが、平成22年には40兆円にまで拡大すると予想されている。
 循環型経済社会においては、これまで廃棄物として取り扱われていたものを循環資源として再生利用することにより廃棄物の減量化と資源の有効活用を図るため、低廉で効率的な廃棄物のリサイクルシステムを構築する必要がある。

@ リサイクル拠点の形成

1) 循環資源は、大量処理により処理コストの低減を図ることが可能であることから、
 広域的な処理拠点の形成により効率化を図ることが重要である。

2) このため、平成13年度より、リサイクル拠点となる港湾(リサイクルポート)を各地
 域ブロック毎に指定し、既存インフラを有効活用するとともに、リサイクル処理施設
 の集約化やストックヤード等静脈物流拠点としての必要な施設整備を推進してお
 り、今後とも以下のとおり、こうした取り組みを継続して実施することが必要である。
 また、港湾における循環資源の取り扱いを円滑に行うための各種規制緩和等の措
 置も併せて進めることが適当である。

● リサイクルポートの指定
● 循環型社会実現のための港湾におけるリサイクル処理の基盤となる岸壁等の施
  設整備

(実施スケジュール)
・リサイクルポートの指定については、平成14年度以降、2次指定等逐次実施
・岸壁等の施設整備については、平成14年度以降も継続的に実施

A 広域的な静脈物流システムの構築

1) 廃棄物の輸送については、従来、少量・短距離の輸送が主流であったが、今後、
 リサイクル対象品目の増加、品目毎のリサイクル率の向上等リサイクルの進展に
 より、輸送の大量化・中長距離化が進むものと予想される。

2) また、循環資源は大量輸送に適した急がない貨物等の特徴を有するとともに、大
 気汚染防止、地球温暖化防止、交通の円滑化の観点等も踏まえて、環境負荷・交
 通負荷の小さい内航海運による新たな静脈物流システムの構築が求められる。

3) このため、リサイクルポートを中心とした内航海運による広域的な静脈物流ネット
 ワークを形成するとともに、動脈物流と静脈物流の連携による双方向輸送の実現、
 廃家電、廃プラスチック、廃タイヤ、鉄スクラップ等積荷特性に応じた輸送・荷役の
 効率性向上等を図ることが必要である。

● 広域的な静脈物流システムの構築に向けた実証試験の実施

(実施スケジュール)
 平成14年度にリサイクルポート間の循環資源の海上輸送を実現するため、海上輸送の実証試験を実施