第3回(2001.12.10)
次世代内航海運懇談会・暫定措置事業部会
議事概要


議事

(1) 暫定措置事業等に係る製作評価について(中間報告)(案)について
(2) 暫定措置事業の現状の取り組みと今後のあり方について(案)について
(3) その他

議事経過

 事務局より資料に基づいて暫定措置事業等に係る政策評価の中間報告(案)及び暫定措置事業の現状の取り組みと今後のあり方について(案)について説明を行い、その後、委員による議論を行った。

主な議事の概要

○ 平成15年度以降の納付金・交付金の単価について

・平成10年から15年までの交付金単価は、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業実施時における船種ごとの引当資格の市場価格を中間点として、漸減する仕組みとしており、オーナーの立場からは、例えば貨物船については10万円の横這いが望ましいとの意見があった。

・また、交付金単価を仮に10万円で据え置くとすれば、納付金単価も据え置きとなるが、この場合事業の後半に建造された船舶は、事業終了後に納付金コストがゼロで
建造された船舶と比較して著しい競争力の差が生じることとなることを考慮すると、
15年度以降の交付金単価は段階的に引き下げざるを得ないのではないかという意見があった。

・できるだけ多くの船舶を解撤するインセンティブを付与するためには、平成15年度以降の交付金単価は漸次引き下げることが必要という意見があった。

・オーナーについては15年度以降の交付金単価の横這いを望む意見が多数あが、
現実的には、暫定措置事業の基本スキームは船舶の建造等納付金で解撤等交付金を支払うものであり、基本的な経済構造の変化に起因して解撤と建造のタイムラグが拡大していることを考慮すると、交付金単価の漸次段階的な引き下げはやむを得ないのではないかという意見があった。

・荷主の立場からは、重要な輸送手段である内航船舶の競争力低下につながることを避ける観点から、交付金単価は漸次段階的に引き下げることが適当という意見があった。

○ 内航輸送の活性化方策について

・モーダルシフト船を建造する際に、内航総連が建造認定条件として寄港地、積荷、
航路等に制限を付していることは、同船の内航への投入が既存事業者に与える影響を少なくするために設定されたものであり、今後、モーダルシフト推進の観点から当該条件は見直すべきである。

・荷主がコスト保証をしている石灰石専用船等についても、セメント専用船と同様に、暫定措置事業対象外船舶とすべきである。

○今後の船舶建造のあり方について

・コストに見合った運賃用船料が収受できない現在の水準では船舶の建造は容易でない。従って、船腹過剰の解消に取り組んでいくことが必要である。

・荷主として用船保証を行う必要性を生じさせるとともに、船主も自然と建造意欲が
出るような市場環境を整備することが必要。このためには、抜本的な船腹需給の適正化を行うことが必要である。

・現状では、新規建造、季節変動等についても運賃に反映されない等、公正かつ活性化されたマーケットが確立されていないことから、船腹需給を均衡にしただけでは、適切な船舶建造が行われることは困難ではないか。今後は、運賃スケールの設定等市場の透明性向上等の方策の検討が必要。


暫定措置事業の現状の取り組みと今後のあり方について

(案)

(注)○は両論があり、今回の部会で議論いただきたい事項



1.これまでの運営状況

(1)過去3年間(平成10〜12年度)の状況
 暫定措置事業開始時における船腹需給が過剰状態であったこと、我が国経済が引き続き低迷していること等から、相当量の船舶の解撤等(1,007隻、110万対象トン、788億円)が行われた一方で、船舶の建造等は伸び悩んだ(171隻、41万対象トン、155億円)。

 

解撤等交付金

建造等納付金

隻 数

対象d数

交付金額

隻 数

対象d数

納付金額

平成10年度 667  75.3  573.8  31  10.6  27.0 
平成11年度 146  14.8  95.5  43  9.5  40.8 
平成12年度 194  20.3  118.5  97  21.0  86.9 

合  計

1,007  110.4  787.8  171  41.1  154.7 

 注1.対象トン数の単位は万トン、金額の単位は億円である。
    2.数字は認定ベースである。


(2)最近の状況(平成13年度)
 @船舶の建造等は、12年度において20万対象トン水準と回復したものの、今年(1〜10月)に入り、再び納付金額ベースで対前年同期比18%減と低迷している。
 一方、船舶の解撤等は、今年に入り大幅に増加傾向となっており、駆け込み、前倒しという面もあり交付金額ベースで対前年同期比48%増の状況となっている。
 このため、暫定措置事業の収支状況は、納付金による収入と交付金の支出にタイムラグが生じている。

 Aこのため、内航総連は解撤等交付金の交付に必要な資金の見通しが明確でないとして、平成13年9月より交付金交付の当面延期措置を実施するに至っている。

 Bなお、内航総連においては、延期事業者のうち金融機関等への事情説明等支援を必要とするものに対して、対策委員会を通じた所要の協力を実施している。

2.シンデレラ・プロジェクト実施の取り組み

 
@暫定措置事業における交付金の支払期限を15年間と確定するとともに、非効率な老朽船の抜本的処理を通じた高度で安全な内航輸送システムの構築を図るため、シンデレラ・プロジェクト(船齢15年を超える老朽船の代替建造促進のため、船齢15年を超える船舶は平成15年4月以降交付金交付の対象としないこと)を円滑かつ確実に実施することが重要である。

 Aシンデレラ・プロジェクトの解撤・建造の見通し
 シンデレラ・プロジェクトは、内航海運船腹量全体の24%にあたる最大1,865隻、144万対象トン (平成13年2月時点)が対象船舶である。このうち、具体的な解撤規模は運賃用船料マーケットの状況等に左右されるものの、最大で、船齢、使用状況等を勘案し、87万対象トン(船腹量全体の15%)が13〜15年度にかけて解撤等されるものと見込んでいる。
 一方、これに対応した船舶の建造等は、14〜18年度において、解撤等量の6割強に当たる56万対象トンを見込んでいる。

 
Bこうしたシンデレラ・プロジェクトの実施により、平成15年4月以前に相当量の船舶の解撤等が行われる一方、これに対応する船舶建造等には数年程度の期間を要することとなる。したがって、解撤等による交付金支払と建造等による納付金納付までの間における事業収支上のタイムラグに対応するための所要の資金措置を実施することが必要である。

 Cこのため、平成13年度補正予算において、政府保証枠210億円から290億円への増加(借入資金総枠700億円から800億円)を措置したところであり、引き続いて、14年度予算要求においても所要の政府保証枠の設定を要求している。


 3.暫定措置事業の今後の課題と取り組み

(1)暫定措置事業は、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業の解消に伴うソフトランディング施策であるとともに、内航海運の構造改革を推進する観点から、船腹需給の適正化と競争的市場環境整備を図るためのものである。
 このため、同事業は船舶の平均使用期間等を踏まえ15年間交付金の交付を実施し収支相償った時点で終了するとしている。
(注)ソフトランディング施策とは、「引当資格の財産的価値は、船腹調整事業の結果派生した反射的利益であり、これを国が買い上げることは困難である」(平成13年3月、海造審内航部会報告書より)という整理を踏まえ、事実上の経済的価値を有していた引当資格が無価値化するという経済的影響を考慮したものである。

(2)しかしながら、暫定措置事業については、多額の借入金を用いて長期間にわたり実施されるものの、現時点では収入は必ずしも安定的とは言えないこと、船種により事業活動に対して一定の制限が加えられていること等、事業の円滑かつ着実な実施や経済的・社会的要請への的確な対応等の観点からは改善すべき課題がある。

(3)このため、暫定措置事業については、例えば以下のとおりその運営方法の見直し、内航輸送の活性化等に取り組むことが適当である。

 @事業運営方法の見直しについて

 1)資金管理方法の適正化
 暫定措置事業の借入金の円滑な返済を確保し、交付金の計画的な交付を図るため、同事業の資金管理について、納付金収入に対応して交付金支払を行う方法に改善することが必要である。


 2)情報の適切な公開
 内航海運業者はもとより、金融機関等関係者において情報の偏在、誤解等による弊害を避けるため、船舶の建造・解撤の状況、一定の事業収支の状況等暫定措置事業に係る情報の適切な公開を行うことが必要である。

 A代替建造の促進について

 暫定措置事業の基本スキームは、納付金で交付金を支払うというものである。したがって、同事業の円滑かつ着実な実施を図る観点から、交付金の交付を確保するためには、直ちに借入金の追加のみを考慮するのではなく、納付金収入の増加を図るため代替建造等船舶の建造の促進に取り組むことが必要である。

 B平成15年度以降の納付金・交付金の単価について

 1)平成15年度以降の納付金・交付金の単価の設定に当たっては、以下の点に十分留意して決定することが必要である。

(留意点)
 イ 現時点の船腹需給状況は必ずしも均衡状態とは言えないため、なお一層の船腹の解撤等の促進を図る必要があること。

 ロ 上記2.のシンデレラ・プロジェクトの円滑かつ着実な実施のため、単価差を拡大する等収入確保を図る必要があること。

 ハ 平成15年度以降の交付金単価は、「規制緩和推進3ヵ年計画(再改定)」(平成12年3月31日閣議決定)を踏まえ、事業収支を勘案しつつできる限り単価を低く抑える方向で検討する必要があること。

 2)なお、平成15年度以降の納付金・交付金の単価については、従来より主に以下の2つの意見がある。

 ○交付金は引当資格の財産的価値の手当てであるため、例えば、平成15年度以降10年間は暫定措置事業開始時点の引当資格の相場価格に相当する貨物船10万円等の横這いとすべきである。


 
○暫定措置事業はスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業の解消に伴うソフトランディング措置であるため、これまでと同様に、漸次段階的に引き下げるべきである。

 C内航輸送の活性化方策について

 1)内航海運においては、長期間にわたりスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業を実施していたため、暫定措置事業規程、保有船腹調整規程等に基づき、一定の船舶(コンテナ船・RORO船(100隻程度)、自動車、石灰石等専用船(100隻程度)、土・砂利・石材専用船(900隻程度)等について、構造、積荷、航路等の条件が付されている。

 2)こうした条件の一部は、建造等納付金の単価(暫定措置事業開始以前は、引当資格の価格)が異なることから、当該船舶の船種を特定・定義するため必要なものであり、一定の合理性がある。

 3)しかしながら、これらの船舶については、荷主からのニーズに応じて積荷、航路等を変更する場合は、内航総連内部でその手続に相当の時間とコストを要するとともに、条件によっては制度上変更手続自体が整備されていないものがあり、問題となっている。


 
4)また、本年11月の気候変動に関する国際連合枠組条約第七回締約国会議(COP7)を契機に、関係国毎に具体的な二酸化炭素削減を定めた「京都議定書」の批准をはじめとする環境保全に向けた国内対策の強化が急務となってきている等、今後、モーダルシフトに対する社会的要請が一層高まり、内航海運に対する期待と責任が増大してくるものと考えられる。

 ○このため、事業者の経営の柔軟かつ機動的な対応を確保するとともに、国内物流の四割を担い、トラック等に比べれて環境負荷の小さい内航海運によるモーダルシフトを推進する等、内航輸送の活性化を図る観点から、以下のとおり、規程により付されている船舶の条件の見直し等を行うことが必要である。

 イ 船舶の条件のうち船種の特定・定義に関係のないもの(例えば、寄港地・航路の制限等)を廃止

 ロ 特にモーダルシフト船については、イに加えその他要件を緩和

 ハ 船舶の条件の変更に際して、処理期間の短縮、作成書類の削減等内航総連の手続を簡素化


 4.暫定措置事業の今後のあり方

(1)今後の船舶建造のあり方

 @引当資格に依存した船舶建造について
 1)暫定措置事業以前(スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業)においては、船舶の建造融資の際に、引当資格が一部の金融機関において担保又は含み資産の一部として評価されていた。
 このため、一部のオーナー事業者は、過小資本にもかかわらず、引当資格の財産的価値に過度に依存して多額の投資を行い、かえって船腹需給の適正化が阻害されていた面が少なくなかったといわれている。


 2)ただし、この点については以下の2つの実態を勘案して整理しておくことが必要である。
 【金融機関の実態】
 内航船舶の過半数を占める運輸施設整備事業団の共有建造方式、大型船を中心に船舶融資を行っている中小企業金融公庫、都市・地方銀行等では、従来から引当資格を評価しておらず、引当資格を評価していたのは一部の信用金庫等に限られること。

 【内航海運事業者の実態】
 ・一般船(特定船以外の船舶をいう。)のオペレーター(350事業者・800隻・120万総トン)や2隻以上保有しているオーナー(500事業者・1,200隻・85万総トン)については、金融機関等が建造融資を判断した要因は安定した荷主との取引があること等であり、引当資格の評価如何が大きな影響を与えたとは考えられないこと。

 ・特定船(砂利船、曳船等をいう。)事業者(850事業者・1,650隻・95万総トン)については、そもそも引当資格が低額で建造融資に対して大きな影響を与えたとは考えられないこと。

 ・セメント船、特殊タンク船事業者(250事業者・350隻・40万総トン)についてはスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業及び暫定措置事業の対象外であること。

 A船舶建造の今後の方向について

 
○暫定措置事業では、新規建造船舶は引当資格が付されないこと、交付金及び納付金の単価を予め明確化したこと等により、船舶建造は、相応の船腹需要を前提として、船舶収支を勘案し行われる。

 ○今後の暫定措置事業の進展に併せて、将来的には、市場原理と自己責任の考え方に基づく船舶建造が行われる。

 ○引当資格に依存した船舶建造はできないため、従来のように過小資本のオーナー事業者だけでは必要な船腹量の確保が困難となるおそれがある。今後は、荷主、オペレーター事業者が積荷・用船保証等適切に関して船舶建造を行うことも必要ではないか。

 ○運輸施設整備事業団による共有船舶建造業務についても、今般の特殊法人の見直しの議論を踏まえ、業務の重点化等所要の見直しを図ることが適当である。(なお、具体的には次世代内航海運懇談会において検討予定。)

(2)暫定措置事業を早期終了すべきとの意見について

 ○暫定措置事業を早期終了すべきとの意見

(理由)
 @船舶建造コストの低減による船舶の自由な建造の促進、輸送コスト面における競争力の強化

 A暫定措置事業の借入金の累増による将来的破綻の回避

 ○暫定措置事業を早期終了する場合の問題点

(問題点)
 @同事業の開始からまだ3年余しか経過しておらず、上記3.(1)の目的(ソフトランディング施策と船腹需給の適正化・競争的市場環境の整備)が達成されていないこと。

 A事業を途中で終了することにより多額の残存債務が発生すること。

 


内航海運暫定措置事業等に係る政策評価について(中間報告)(案)


はじめに

 政策評価実施の背景・趣旨及び内航海運暫定措置事業等を対象として実施す
る趣旨を説明。

1.政策評価の対象について

(1)政策評価の対象となる施策
 内航海運暫定措置事業(以下「暫定事業」という。)について政策評価を実施する。
 加えて、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業(以下「船調事業」という。)についても、暫定事業の導入の前提となった事業であり、同事業との比較を行う等の観点から政策評価を行うこととする。

(2)政策評価の対象となる施策の概要
@ 内航海運については、内航海運組合法に基づき、競争が正常の限度を超えて行われているため、内航海運業者の事業活動に関する取引の円滑な運行が阻害され、その相当部分の経営が著しく不安定となっている場合は、海運組合において組合員の保有船腹の自主的な調整を行うことができることとされており、こうした調整事業について国土交通大臣の認可を受けたときは、独占禁止法の適用除外とされている。

A 船調事業については、引当比率の設定を通じた船腹の解撤量と建造量の調整を内容としており、昭和40年に設立された日本内航海運組合総連合会(以下「内航総連」という。)によって、41年から平成10年5月まで内航海運の船腹過剰対策として継続的に実施されていたものである。船調事業の実施の結果、船舶の建造に一定のスクラップ(引当資格)を必要としたため、所要の引当資格を自前で用意できない場合は他者の所有する引当資格を購入しなければならないという事情により、船舶本体の売買に附随して、一定の財産的価値を有するものとして、いわゆる引当資格が副次的に発生することとなった。

B しかしながら、平成10年5月、内航海運の活性化を図るため、競争制限的との批判が強かった船調事業を解消し、これに伴うソフトランディング策として暫定事業を導入した。暫定事業は、内航総連が実施主体となり、保有船舶を解撤等した者に対して一定の交付金を交付するとともに、船舶建造者から一定の納付金を納付させること等を内容とする事業であり、法的には船調事業と同じく内航海運組合法に基づく調整事業である。また同事業は、交付金の交付を15年間実施し収支相償った時点で
終了することとされている。
 行政の取組みとしては、内航総連が事業実施のため運輸施設整備事業団(以下「事業団」という。)、商工中金及び民間金融機関から借り入れる金額のうち、事業団が民間金融機関から借り入れるものについて政府保証措置を講じているところである。

2.政策評価の対象となる施策の政策目的について

 政策評価の実施に際しては、その対象となる施策の目的に応じて評価内容も影響を受けるため、まず当該施策の政策目的を明確化した上で、評価の観点、具体的評価項目の設定等を行うこととする。

(1)スクラップ・アンド・ビルド方式の船腹調整事業

@ 内航海運においては、昭和20年代後半以降、その時々の経済動向を反映し、好況期には輸送需要の増加による船腹需給のひっ迫から船舶の新建造が盛んに行われ、また、低迷期には船舶の輸送力調整が困難であること等から過剰船腹状態に陥るという状況を繰り返していた。

A これに対し、昭和38年4月、当時の内航海運業界における中小零細事業者の乱立による過当競争の激化、過剰船腹の深刻化等の状況を受けて、運輸大臣の私的諮問機関として「内航海運問題懇談会」が設置され諸問題について検討を重ねた結果、同年7月、内航船舶の船腹の調整を全国的事業者組織を設立の上実施すること等を内容とする意見書がとりまとめられた。

B 昭和39年7月に小型船海運業法及び小型船海運組合法を改正し、内航海運業法及び内航海運組合法が施行され、これにより、内航海運業者の組織化が急速に進められ、同年12月に内航総連が設立された。内航総連は、内航海運問題懇談会意見書等に基づき、内航海運組合法第8条第1項第5号(組合員が保有する内航運送の用に供される船舶の船腹の調整)に規定する船腹の調整を自主的に実施するため、スクラップ・アンド・ビルド方式を内容とする調整規程を定め、昭和41年6月、運輸
大臣の認可を受け、これ以降、平成10 年5 月まで船調事業が実施されることとなったものである。

C したがって、船調事業の政策目的については、こうした船調事業の導入に係る一連の経緯等を踏まえ、船腹需給の適正化による船腹過剰の抑制と設定することが適当である。

(2)内航海運暫定措置事業

@船調事業の解消に至る経緯

1) 昭和63年12月、行政改革審議会による「公的規制の緩和に関する答申」において、「内航海運業の船腹調整について、船腹量の需給動向等を勘案し、可能な船種について解撤比率の緩和を図るとともに、今後、船腹調整に係る公的依存からの脱却に向けて、構造改善等の積極的推進を図る。」とされ、船調事業に対する規制緩和の方向性が示された。

2) 平成4年3月の海運造船合理化審議会(以下「海造審」という。)の答申「今後の内航海運対策のあり方について」において、「中長期的には船腹調整制度への依存を解消し得るような事業体質の強化を図る。現時点においては、同制度の機動的、弾力的運用を前提として、当面の維持存続を図る」とされた。

3) さらに、平成6年7月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」では、国内経済をめぐる環境の急激な変化を踏まえ、経済政策の基本を市場原理と自己責任に立った経済社会の実現に置くこととして、船調事業等個別法による独占禁止法適用除外カルテル制度等については、「5年以内に原則廃止する観点から見直しを行い、平成7年度末までに具体的結論を得る。」こととされた。

4) これを踏まえ、平成7年6月の海造審答申「今後の内航海運対策について」において、法律上の船腹調整制度は船腹過剰時のセーフガード(緊急避難措置)として維持存続を図る一方、現在の船調事業は見直すものとするとされ、見直しに当たって配慮する点として、投機的な船舶建造を防ぐ「一定の船腹需給の適正化措置」、船主経済の混乱を避けるための「激減緩和措置」、運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化措置等が指摘された。

5) その後、規制緩和の実施状況の監視等を行うことを目的として設置された行政改革委員会による、平成7年12月の「規制緩和の推進に関する意見」において、船調事業については、「荷主の理解と協力を得ながら、構造改善の抜本的な推進による経営基盤の強化、内航海運業界による債務保証業務の実施等、船腹調整事業の計画的解消に向け直ちに取り組むこととし、その環境整備の施策内容及びスケジュールを速やかに具体化しながら鋭意推進すべきである。」と指摘された。これに続き、平成8年3月には、船調事業については「荷主の理解と協力を得ながら5年間を目途に所要の環境整備に努め、その達成状況を踏まえて同事業への依存の解消時期の具体化を図る」ことを内容とする閣議決定(「規制緩和推進計画の改定について」)が行われた。

6) その後、運輸省(当時)は、平成8年12月、競争の促進により交通運輸分野における経済活動の一層の効率化、活性化を図るため、需給調整規制を原則として概ね3年ないし5年後を目標期限として廃止する方針を決定し、船調事業については、「その解消を前倒しの方向で検討する。」こととした。
 さらに、この内容は平成8年12月の閣議決定「経済構造の変革と創造のためのプログラム」に反映され、続く平成9年3月の閣議決定「規制緩和推進計画の再改定について」においては、船調事業について「荷主の理解と協力を得ながら4年間を目途に所要の環境整備に努め、その達成状況を踏まえて同事業への依存の解消時期の具
体化を図ることとするが、同事業の解消の前倒しにつき中小・零細事業者に配慮しつつ引き続き検討する。」とされた。

7) こうした船調事業の解消に係る様々な取組みを受け、平成9年8月より同事業の解消問題の今後の進め方に関し、海造審内航部会において検討を行った結果、平成10年3月に報告書「内航海運船腹調整事業を解消するための方策について」を取りまとめ、この中で、船腹調整事業を解消し、これに伴い暫定事業を導入することとされた。
 その後、この報告書を受けて、平成10年3月、「内航海運業における船腹調整事業については、できるだけ短い一定期間を限って転廃業者の引当資格に対して内航総連が交付金を交付する等の暫定措置事業を導入することにより、現在の船腹調整事業を解消する。」旨の閣議決定「規制緩和推進3ヵ年計画」が行われた。

8) なお、平成12年3月の閣議決定「規制緩和3カ年計画(再改訂)」においては、「平成15年度の交付金の単価見直しの際、事業収支を勘案しつつ、できる限り単価を低く抑える方向で検討すること」とされているところである。

(参考)海造審内航部会報告書「内航海運船腹調整事業を解消するための方策について」(平成10年3月)より抜粋

1)暫定事業の背景
・内航海運事業者の事業経営に悪影響が発生し国内物流の安定的確保に支障をきたすおそれ
・内航海運業や小型造船業などの内航海運関連産業が基幹産業としての役割を果たしている特定の地域の経済全体への影響

2)暫定事業の効果
・船舶建造の自由度の高まり
・船舶の近代化の促進
・船腹過剰の解消の促進

A政策評価の前提となる政策目的

 以上のような船調事業の解消、暫定事業の導入の経緯等を踏まえ、政策評価の前提となる政策目的を以下のとおり設定することが適当である。

1)内航海運市場における公正で自由な競争環境への移行

 船調事業の解消の結果、船舶建造の自由度が高まることから、市場原理と自己責任の考え方の下、事業者間における競争の促進が図られることとなる。また、暫定事業においては、かつて船調事業の下で船舶建造に引当資格を必要とした船舶と、それ以外の船舶との間の資金コスト面の競争条件の公平化を図る観点から、交付金単価を漸減させ、引当資格を段階的に解消させることとなっている。
 したがって、暫定事業については、こうした公正かつ自由な競争を促進するための環境の形成が重要な政策目的であるとともに、この環境整備を15年間にわたり段階的に実施することにより、引当資格の解消に伴う内航海運業及び地域経済への経済的影響の緩和にも資するものである。

2)船腹過剰の解消と船舶の近代化の促進

 内航海運市場は、経済の長期低迷や産業構造の変化に伴って輸送需要が伸び悩み、船腹過剰傾向が容易に解消しない状況に置かれている。また、内航輸送の効率化・合理化を通じたコスト競争力の向上、モーダルシフトの推進等にあわせて船舶の近代化を更に促進していくことが求められている。このため、暫定事業については、その推進を通じて船腹過剰の解消と船舶の近代化の促進を図ることは重要な政策目的である。

3.政策評価の観点と方法

(1)施策の必要性に係る評価
 ここでは、【現在の当該施策の進め方に係る妥当性】(【】は設問の案)について政策評価を行うこととする。

項目 設問例 主な指標、留意点等
1)ニーズの妥当性




















イ.社会的ニーズの存在・内容
 【船調事業の弊害の検証】
 【暫定事業がなかった場合 の影響の大きさ】
 【当時の船腹需給の状況】









(★:一部で計量的分析を実施。以下同様。)
・引当資格の意義
・引当資格取引価格データ
・内航海運事業者の財務指標(オーナー、オペレーター)
(地域経済への影響)
・地域集中度
・船どころ地域データ
(船腹過剰の存在)
・過剰率(適正船腹量データ)
・運賃・用船料データ
ロ.当事者からの要望
 【事業者等当事者からのニーズはあったか】
・海運組合の意見
・荷主の意見
・内航海運事業者アンケート自由回答結果のまとめの活用
ハ.反論の可能性
 【ハードランディングの方が良かったか】
 
2)行政関与の
在り方












イ.関係者の役割分担の妥当 性
 【内航総連が事業主体であ ることの妥当性】
・事業主体としての内航総連の役割
・行政の関わり方
・船調事業の解消、暫定事業の導入等の経緯




ロ. 事業実施形態の妥当性
 【建造者以外の負担も含め た検討の必要性】
・法的枠組み

ハ.反論の可能性
 【引当資格に対して、直接経済的措置を講ずるべきだったか】
 

(2)施策の有効性に係る評価

 ここでは、【政策の具体的効果】について政策評価を行うこととする。

項目 設問例 主な指標、留意点等
1)効果(成果の発現状況)









 【例えば以下の観点から政策効果が上がっているか】
・事業自体の進捗状況
・事業者、地域経済への経
済的影響の緩和
・船腹過剰の解消
・船舶近代化の推移
・モーダルシフト



・交付金・納付金の状況等暫定事 業の諸指標
・事業者の経営指標
・事業者の倒産件数
・地域の経済指標(有効求人倍率 など)
・過剰率(適正船腹量との乖離)の 推移
・平均総トン数、平均船齢の推移
・モーダルシフト対応船舶の建造状 況
・運賃・用船料水準
2)外部要因の
影響

 【一般的経済状況等外部要因の影響の検証】

・上記について外部要因の影響度 の評価
・暫定事業対象船舶・暫定事業対 象外船舶の比較 ★

(3)施策の効率性に係る評価

 ここでは、政策の効果があがっているとした場合【行政、事業者等関係者が負担する費用に対して政策目的の効果(便益)は見合ったものとなっているか】について政策評価を行うこととする。

項目 設問例 主な指標、留意点等
1)代替ケース
との比較







 【比較の視点から、費用と効果(便益)の関係の検証】







・費用対効果(便益)について下記 2)の指標について以下の視点で 評価する。 ★
(3つの視点)
a.船調事業を解消し、暫定事業を 実施しない場合との比較
b.船調事業を継続していた場合と の比較
c.暫定事業対象船舶と暫定事業 対象外船舶との比較
2)費用対効果 イ.費用
 【事業に係る費用は行政、事業者等関係者においてどの程度か】
ロ.効果(便益)
 【事業に係る効果(便益)は、例えば以下のような項目についてどの程度か
・公正で自由な競争環境への 移行
・船腹過剰の解消、船舶の近  代化】
・行政経費、金利、事務経費
・暫定事業の諸指標
・運賃・用船料水準
・事業者、地域経済への経済的影 響の緩和効果
・生産性の向上





4.まとめ

・論点の整理
・今後の施策実施に当たっての改善項目等を記述。