1.これまでの運営状況について
(1)過去3年間(平成10〜12年度)の状況
内航海運暫定措置事業(以下「暫定措置事業」という。)のこれまでの運営状況をみると、同事業開始時における船腹需給が過剰状態であったこと、我が国経済が引き続き低迷していること等から、相当量の船舶の解撤等(1,007隻、110万対象トン、788億円)が行われた一方で、船舶の建造等は伸び悩んだ(171隻、41万対象トン、155億円)。
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解撤等交付金 |
建造等納付金 |
隻 数 |
対象d数 |
交付金額 |
隻 数 |
対象d数 |
納付金額 |
平成10年度 |
667 |
75.3 |
573.8 |
31 |
10.6 |
27.0 |
平成11年度 |
146 |
14.8 |
95.5 |
43 |
9.5 |
40.8 |
平成12年度 |
194 |
20.3 |
118.5 |
97 |
21.0 |
86.8 |
合 計 |
1,007 |
110.4 |
787.8 |
171 |
41.1 |
154.6 |
注1.対象トン数の単位は万トン、金額の単位は億円である。
2.数字は認定ベースである。
(2)最近の状況(平成13年12月期申請まで)
@船舶の建造等は、12年度において20万対象トン水準と回復したものの、13年(1〜7月)に入り、景気の一層の低迷から納付金額ベースで対前年同期比4割減と低迷した。しかしながら、後半に入って幾分回復の兆しが見えてきており、平成13年度全体では、ほぼ前年度並みの建造等が行われることが期待される。
一方、船舶の解撤等は、13年に入り大幅に増加傾向となっており、交付金交付の一時延期に伴う駆け込み、前倒しという面もあって交付金額ベースで対前年同期比倍増の状況となっている。
このため、暫定措置事業の収支状況は、納付金による収入と交付金の支出にタイムラグが生じることとなっている。
Aこの結果、内航総連は解撤等交付金の交付に必要な資金の見通しが明確でないとして、平成13年9月より12月にかけて一時的に交付金交付の延期措置を実施していたところである。
2.シンデレラ・プロジェクト実施について
(1)暫定措置事業における交付金の支払期限を15年間と確定するとともに、非効率な老朽船の抜本的処理を通じた高度で安全な内航輸送システムの構築を図るためには、シンデレラ・プロジェクト(船齢15年を超える老朽船の代替建造促進のため、船齢15年を超える船舶は平成15年4月以降交付金交付の対象としないこと)を円滑かつ確実に実施することが重要である。
(2)シンデレラ・プロジェクトは、内航海運船腹量全体の24%に当たる最大1,865隻、144万対象トン
(平成13年2月時点の想定)が対象船舶とされている。このうち、具体的な解撤規模は運賃用船料マーケットの状況等に左右されるものの、船齢、使用状況等を勘案し、最大で87万対象トン(船腹量全体の15%)が13〜15年度にかけて解撤等されるものと見込まれている。
一方、これに対応した船舶の建造等は、14〜18年度において、解撤等量の6割強に当たる56万対象トンが見込まれている。
(3)こうしたシンデレラ・プロジェクトの実施により、平成15年4月以前に相当量の船舶の解撤等が行われる一方、これに対応する船舶建造等には数年程度の期間を要するものと見込まれている。したがって、解撤等による交付金支払と建造等による納付金納付までの間における事業収支上のタイムラグに対応するための所要の資金措置を実施することが必要となる。
(4)このため、平成13年度補正予算において、政府保証枠210億円から290億円(借入資金総枠700億円から800億円)への拡充措置が講じられたほか、さらに14年度当初予算案においても、政府保証枠290億円から370億円(借入資金総枠800億円から900億円)への拡充が盛り込まれているところである。
3.暫定措置事業の今後の課題について
(1)船舶建造における暫定措置事業の影響
@ 暫定措置事業以前(スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業)の船舶建造においては、建造融資の際に、引当資格が信用金庫等一部の金融機関によって担保又は含み資産の一部として評価される実態がみられた。
このため、とりわけ鉄鋼船、石油タンカー系の一部のオーナー事業者においては、船舶建造に当たり、過小資本にもかかわらず、引当資格の財産的価値に依存して相当程度の投資が可能となったことから、かえって船腹需給の適正化が阻害されるこ
ととなっていた面が少なくなかったといわれている。
A 暫定措置事業以降は、新規建造船舶には引当資格が付されないこと、交付金及び納付金の単価が予め明確化されたこと等により、基本的には、船舶建造は相応の船腹需要を前提とし、船舶収支を勘案して行われることとなってきている。
したがって、今後、オーナー事業者においては船腹需要、船舶収支等を十分勘案して船舶建造を行うことは勿論、必要な船腹量を確保し安定的な輸送を維持する観点からは、荷主企業やオペレーター事業者自身において、運賃・用船料におけるコス
ト保証等輸送コストの適切な管理に努めることが適当である。
(2)暫定措置事業の抱える課題
@ 暫定措置事業は、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業の解消に伴うソフトランディング施策であるとともに、内航海運の構造改革を推進する観点から、船腹需給の適正化と競争的市場環境整備を図るための施策である。
このため、同事業は船舶の平均使用期間等を踏まえ、15年間交付金の交付を実施し収支相償った時点で終了するとしている。
(注)ソフトランディング施策とは、引当資格の性格について「引当資格の財産的価値は、船腹調整事業の結果派生した反射的利益であり、これを国が買い上げることは困難」(」平成10年3月海運造船合理化審議会内航部会報告書より)との整理を踏まえ、事実上の経済的価値を有していた引当資格が無価値化することによる経済的影響を考慮したものである。
A しかしながら、暫定措置事業については、多額の借入金を用いて長期間にわたり実施されるものの、現時点では納付金による収入は必ずしも安定的とは言えないこと、船種により事業活動に対して一定の制限が加えられていること等、事業の円滑かつ着実な実施や経済的・社会的要請への的確な対応等の観点からは改善すべき課題がある。
B また、総合規制改革会議による「規制改革の推進に関する第1次答申(平成13年12月18日閣議決定)において「内」、航海運暫定措置事業の運営方法の改善」が指摘されているところであり、これを踏まえて早急に事業の適切な見直しに取り組むことが必要である。
4.暫定措置事業の今後の取り組みについて
暫定措置事業については、具体的には、以下のとおりその運営方法の見直し、内航輸送の活性化等に取り組むことが適当である。
(1)事業運営方法の見直しについて
@ 資金管理方法の適正化
暫定措置事業の借入金の円滑な返済と交付金の計画的な交付を図るため、同事業の資金管理について、納付金収入に対応して交付金支払を行う方法に改善することが必要である。
A 情報の適切な公開
内航海運業者はもとより、金融機関等関係者において情報の偏在、誤解等による弊害を避けるため、船舶の建造・解撤の状況、一定の事業収支の状況等暫定措置事業に係る情報の適切な公開を行うことが必要である。
(実施スケジュール)
平成14年度より措置
(2)代替建造の促進について
暫定措置事業の基本スキームは、納付金で交付金を支払うというものである。したがって、交付金の交付を確保し、同事業の円滑かつ着実な実施を図るためには、直ちに借入金の追加のみを考慮するのではなく、まず納付金収入の増加を図ることが重要である。
このため、運輸施設整備事業団による共有建造方式の仕組み等を十分活用して代替建造等船舶の建造の促進に取り組むことが適当である。
(3)平成15年度以降の納付金・交付金の単価について
@ 平成15年度以降の納付金・交付金の単価については、従来より、主にオーナー事業者を中心として「交付金は引当資格、の財産的価値の手当てであるため、例えば、平成15年度以降は暫定措置事業開始時点の引当資格の相場価格に相当する貨物船10万円等の横這いとするべき」との意見がある。
A 一方、平成15年度以降の納付金・交付金の単価の設定に当、。たっては以下の点に十分留意して決定することが必要である
(留意点)
1) 現時点の船腹需給状況は必ずしも均衡状態とは言えないため、なお一層の船腹の解撤等を進め、船舶の近代化の促進を図る必要があること。
2) 上記2.のシンデレラ・プロジェクトの円滑かつ着実な実施のため、単価差を拡大する等収入確保を図る必要があること。
3)
平成15年度以降の交付金単価は、「規制緩和推進3ヵ年計画( 再改定(
平成12 年3月31日閣議決定) を)」踏まえ、事業収支を勘案しつつできる限り単価を低く抑える方向で検討する必要があること。
B したがって、平成15年度以降の納付金・交付金の単価については、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業の解消に伴うソフトランディング措置である暫定措置事業の円滑かつ着実な実施とともに船腹需給の均衡化を推進するため、漸次段階的に引き下げるとともに、単価差を2万円に拡大することが必要である。
(実施スケジュール)
平成13年度内に結論を得て、14年度のできるだけ早い時期までに措置
(4)内航輸送の活性化方策について
@ 内航海運においては、長期間にわたりスクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業を実施していたため、暫定措置事業規程、保有船腹調整規程等に基づき、一定の船舶(コンテナ船・RORO船(100隻程度)、自動車、石灰石等専用船(100隻程度)、土・砂利・石材専用船(900隻程度)等)について、構造、積荷、航路等の条件が付されている。
A こうした条件の一部は、建造等納付金の単価(暫定措置事業開始以前は、引当資格の価格)が異なることから、当該船舶の船種を特定・定義するため必要なものであり、一定の合理性がある。
B しかしながら、これらの船舶については、荷主からのニーズに応じて積荷、航路等を変更する場合は、内航総連内部でその手続に相当の時間とコストを要するとともに、条件によっては制度上変更手続自体が整備されていないものがあり、問題とな
っている。
C また、昨年11月の気候変動に関する国際連合枠組条約第7回締約国会議(COP7)を契機に、関係国毎に具体的な二酸化炭素削減を定めた「京都議定書」の批准をはじめとする環境、、保全に向けた国内対策の強化が急務となってきている等今後モーダルシフトに対する社会的要請が一層高まり、内航海運に対する期待と責任が増大してくるものと考えられる。
D このため、事業者の経営の柔軟かつ機動的な対応を確保するとともに、国内物流の4割を担い、トラック等に比べて環境負荷の小さい内航海運によるモーダルシフトを推進する等、内航輸送の活性化を図る観点から、以下のとおり規程により付され
ている船舶の条件の見直し等を行うことが必要である。
1) 船舶の条件のうち船種の特定・定義に関係のないもの(例えば、寄港地・航路の制限等)を廃止
2) 特にモーダルシフト船については、上記1)に加えその他要件を緩和
3) 船舶の条件の変更に際して、処理期間の短縮、作成書類の削減等内航総連の手続を簡素化
(実施スケジュール)
平成14年度の前半までに国土交通省及び内航総連において具体的見直し方策について検討を行い、年度後半のできるだけ早い時期より措置
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